NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は、同社のアスリート社員のセカンドキャリアを後押しする施策を推進している。競技を取り巻く環境が変わっていることを踏まえ、研修などを通じて引退後のキャリアを早期に検討できるようにすることが狙い。ヒューマンリソース部人材・組織開発部門の浅井公一・キャリアコンサルティング・ディレクターは「国家資格であるキャリアコンサルタントを社内に多く抱えているからこそできる独自の取り組みだ」と説明し、「引退後の選手が輝けるように支援する」と意気込んだ。
NTTコミュニケーションズの浅井公一・ディレクター
同社は7月5日から、NTTグループのラグビーチーム「浦安D-Rocks」で現役選手として活動する社員に加え、引退したOB社員を対象に、キャリアデザインを考える研修会と個別面談を開始した。OB社員には今後も毎月、キャリアコンサルタントが面談し、キャリアデザインを継続的に支援する。望むキャリアに必要なスキルについては、既存のプログラムを活用する。NTTグループのほかのスポーツチームに対しても研修や面談を実施していきたい考えだ。
研修を受けるD-Rocksの選手
ラグビーチームを運営するNTT Sports Xクラブマネジメント部の大内和樹・課長は、研修などを提供する背景として「ここ数年でアスリート社員を取り巻く環境は大きく変わってきている。競技の専門性が高まったことで練習に割く時間が増え、業務と向き合う時間を確保することが難しくなった」と解説。アスリート社員にとっては、引退後のキャリアを早い段階で考えることが必要になっていると指摘した。
NTT Sports Xの大内和樹・課長
コロナ禍の影響もある。大内課長は「コロナ禍でリモートワークが増えたことによって、アスリート社員は、職場で一般社員と交流し、つながりをつくることがこれまで以上に難しくなった」と説明し、引退後のキャリア形成に資する支援策がより求められていると強調した。
現在、現役のアスリート社員は、シーズン中は1週間のうち、平均して1.5日分を一般業務に充てている。NTTグループ内に出向というかたちで業務に従事しており、ほとんどのアスリート社員が外部とのやり取りがない事務系の仕事を担当している。OB社員も、事務系に従事するケースが多く、自分自身でやりたいことを見つけ、社内の公募に挑むのはまだ少数だという。
浅井ディレクターは「これまでアスリートとして培ってきた忍耐力などを生かし、一般社員を超えたキャリアを歩んでほしい。アスリート社員が仕事に対して苦手意識を持っているなら、必ず払拭する」と語った。また「アスリート社員を部下に持つマネージャーが、指導方法について相談に来ることは多い。研修会などで得た内容を基に、アスリート社員向けキャリア指導のマニュアル化を進めたい」と展望した。(大畑直悠)