富士通は10月12日、同社の人的資本経営をテーマとした説明会をオンラインで開き、取り組みの現状と今後の展望について解説した。執行役員EVPの平松浩樹・CHROは、これまでに進めてきた人事施策と業績との間に相関関係が見えてきたとし「データを最大限に活用し、経営と人事で継続的かつ動的に人材ポートフォリオを議論していきたい」と強調した。
平松浩樹 CHRO
富士通は2020年、新たに策定したパーパスに基づき、目指すべき人材や組織の状態を示すHRビジョンを設定した。22年には、ジョブ型人事制度を本格的に始動させている。これまで現時点で所属する人材ありきで組織やポジションを設定してきた反省を生かし、必要な組織やポジションに適した人材を社内外から割り当てる「適所適材」の方針に転換。これにより社内の人材流動性が高まっている。
同社の調査では、社内転職を指す「ポスティング」やキャリア採用で異動してきた人材の割合と、売上高や営業利益の伸び率に正の相関関係がみられるという。平松CHROは「人材の流動性の高さが、(自社)全体のキードライバーという仮説を持っていた。データの蓄積はまだ十分ではないが、仮説を裏付けるデータとして今後も継続して検証したい」と話した。
本年度から25年度までの中期経営計画では、Uvanceをはじめとするサービスソリューションを成長領域と位置付け、それに合わせた人材ポートフォリオ戦略を打ち出している。主にコンサルティング、デリバリー領域を担う人材の拡充に注力する考えだ。
平松CHROは「持続的な企業価値向上を実現するのが人的資本経営の目的。そのためにビジネス戦略にアラインした人材ポートフォリオを描き、ギャップを戦略的に埋めていく必要がある」と強調した。
(藤岡 堯)