富士通は、2月22日に開催した記者会見で、コンサルティングビジネスに本格進出することを発表した。同社はかねてコンサルティング人材の強化を打ち出していたが、2025年度までに1万人へと拡充するコンサル人材のうち、3000人はビジネスコンサルティングの業務に割り当てる方針を明らかにした。システム構築の案件を取るためのコンサルティングではなく、企業の経営戦略の立案・実行を支援するサービスそのものを新たな事業の柱とする戦略を明確化した。
(日高 彰)
新ブランド「Uvance Wayfinders」を発表する大西俊介執行役員
富士通は23年5月に発表した3カ年の中期経営計画の中で、25年度までにコンサルティング人材をグループ全体で1万人に拡充することを重点戦略の一つに挙げていた。現在の同人材は約2000人といい、向こう2年で5倍に拡大する大胆な計画だ。この人材を活用し、コンサルティングサービス自体を新たな収益源としていくビジネスモデルを描く。コンサルティングサービスには、新たな事業ブランドとなる「Uvance Wayfinders(ユーバンスウェイファインダーズ)」の名称を付けた。
今回の発表では、コンサル人材拡充に向けた具体的な施策が示された。1万人のコンサル人材のうち、3000人は外部からの採用、1000人はM&Aによって迎え入れる方針だが、残る6000人は社内からリスキリングで登用する。
Uvance Wayfindersのサービスは、企業の経営課題を解決するビジネスコンサルティングと、競争力強化のためデジタル技術の活用を支援するテクノロジーコンサルティングから構成される。1万人のコンサル人材のうち、3000人がビジネスコンサルティングに、7000人がテクノロジーコンサルティングに携わる予定。ビジネスコンサルティングでは、「カスタマーエクスペリエンス」や「サステナビリティ」など六つの領域でサービスを提供する。テクノロジーコンサルティングには、「データ&AI」や「アジャイル」など七つの領域が設定されている。
大手の戦略コンサルティング会社やITコンサルティング会社と競合する市場に進出するかたちとなるが、富士通執行役員の大西俊介・SEVP CRO(最高収益責任者)は同社の強みとして、長年のIT事業で培った幅広い顧客基盤を挙げる。一般的なコンサルティング会社では、自動車、消費財、金融といった業界ごとに担当する部門やコンサルタントが分かれているが、「産業構造が変わり、これからは業種・業界を越えた新しい事業モデルをつくる必要がある。垂直統合型のモデルは機能しなくなっている」と指摘。加えて、AIや量子コンピューティングなど、世界に大きなインパクトを与える最先端の技術を自社で保有することも差別化要素になるとした。
また、1万人という人材の数について、大西執行役員は「規模がなければ大きな社会的インパクトを創造できない」とし、同社が「Uvance」ブランドの下で取り組む社会課題の解決のためには、コンサルティングビジネスにおいても一定の規模を追求することが不可欠との見方を示した。ターゲットとするのはグローバルで事業を展開する大手企業が中心だが、海外では事業変革への意欲が高い中堅規模の企業も支援していく考えだ。
コンサルティングビジネス単体での売り上げ目標は明らかにしていないが、富士通では25年度にUvanceビジネス全体の売上高を7000億円に拡大する計画で、コンサルティングビジネスは、その実現のための「最後のワンピース」(大西執行役員)と位置付ける。顧客の要求に応じてシステムを構築するモデルから、テクノロジーによって新たなビジネスを創造するモデルへの転換を主導する事業とする考えだ。