日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は1月27日、東京都内で毎年恒例の賀詞交歓会を開催した。また、会にあわせて設けられた「新春セミナー」では、ウェルビーイング研究者の前野隆司氏が登壇し、従業員の幸福度を高めることが企業の業績向上にとっても重要であることを伝えた。
過去最高規模で開催されたJCSSA賀詞交歓会
同協会では定員900人を想定して準備を進めていたが、申し込み受付時点で参加人数は約950人となり、過去最大規模での開催となった。会の冒頭で壇上に立った林宗治会長は、ワイン趣味の仲間がネットオークションで購入した高級ワインが偽物だったというプライベートでのエピソードを紹介。テクノロジーによって売り手と買い手が直接つながることもできる時代だが、「販売店はお客様に安心、ギャランティーを届ける存在でなければならない」と話し、メーカーとユーザーの間に立ち、品質を保証された商品を顧客に届けることがJCSSA会員の役割だと強調した。
JCSSA
林宗治
会長
協会の活動では、会員企業間の接点を増やすことに注力していると説明。2024年後半には、会員各社のAIに対する取り組みや知見を共有するオンラインミーティング「New Normal AI Business(NNAB)」を立ち上げ、すでに3回開催している。NNABは協会のオンライン会議システムの参加上限に近い人数の出席者を集めており、同業他社がどのようにAIを活用しているかに、多くの会員が高い関心をもっていることがわかる。また、この賀詞交歓会の翌週の2月7日には大阪で、西日本の企業に向けた初めての賀詞交歓会を開催するなど、会員同士の交流を新たなビジネスにつなげる機会をさらに増やしていく方針を示した。
来賓として経済産業省から招かれた、商務情報政策局情報産業課の渡辺琢也・情報処理基盤産業室長は、「直近では日本のGDPや賃金は伸びているが、20~30年の期間で見ると他の先進国に比べ低水準。特に設備投資や人材への投資は非常に低い」と指摘。海外のクラウドサービスなどに依存する“デジタル赤字”も問題視されているが、「外国のサービスを使わないようにする」という発想で解決できるものではなく、「自ら新しい使い方を発見しプロダクトを作るしかない」とした。国内へのAIインフラの整備に加え、デジタルスキルの標準化、人材育成支援などを通じて、国がIT産業の発展を後押ししていることを紹介した。
経済産業省
渡辺琢也
室長
賀詞交歓会に先立って同じ会場で行われた新春セミナーでは、慶應義塾大学大学院教授、武蔵野大学ウェルビーイング学部の学部長・教授、ウェルビーイングデザイン代表理事などを務める前野隆司氏が「従業員と社会を幸せにする経営とは!?」と題して講演した。ウェルビーイングとは、しばしば「幸福」と訳されることがあるが、感情としての幸福だけでなく、身体の健康や、社会との関係が良好であることなどを含めた、人が良い状態であることを広い意味で定義する言葉とされる。
前野隆司
教授
ウェルビーイングに関しては米国を中心にさまざな研究が行われており、従業員のウェルビーイングが高い組織は、そうでない組織に比べ、新しいアイデアや事業、改善などにつながる提案が多いといったように、創造性やチャレンジ精神、利他的なマインドが高い傾向があることが確認されているという。前野教授は、国内でもウェルビーイング経営を実践する企業の事例を紹介するとともに、幸せの因子として「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」四つを挙げ、経営者や管理職はこれらの因子に注意をはらい、社内のウェルビーイングを高めて幸せに働けるようにしてほしいと呼びかけた。