アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)は中堅・中小企業向けに生成AIの活用を通じたビジネス支援を推進している。業務効率化だけではなく、生成AIを用いた新事業の創出も後押しし、実際に成果も挙がっている。生成AIが中堅・中小企業のクラウドシフトの呼び水になるとみており、地方パートナーに対する営業トレーニングの強化も図る考えだ。
(大畑直悠)
7月15日には中堅・中小企業向けの戦略に関する記者説明会が開かれた。生成AI活用は技術支援やコスト削減などで後押しする「生成AI実用化推進プログラム」でサポートする。2024年7月の提供開始以来、200社が参画しており、そのうち半数近くが中堅・中小企業だという。常務執行役員の原田洋次・広域事業統括本部統括本部長は、一般的にDXは大企業を中心に進むという見方に対して、「生成AIに関しては逆だ。案件やシステムの規模が大きい大企業と比較して、中堅・中企業ではPoC(概念検証)の数が、桁が違うほど進み、実用化の施策もスピード感がある」と話した。
AWSジャパン
原田洋次 常務
原田常務は「今後は生成AI活用の最適な環境を構築するためにクラウドシフトの進展が見込める。そのスピードも中堅・中小企業のほうが早いだろう」との見方も示した。
AIエージェント「AWS Transform」を活用すれば、「VMware」環境から「Amazon EC2」への移行や、メインフレームで稼働するアプリケーションのモダナイゼーションを短期間で完了できる点を訴求し、生成AIの活用を見据えたクラウド環境へのマイグレーションやモダナイズのビジネスの攻勢を強める構えだ。
生成AIでの成功事例も生まれている。在宅介護サービスを展開するやさしい手は、人手不足に対処するために、24年3月に非エンジニア5人体制で生成AI活用の検討を開始。同年6月には介護記録を自動生成する「むすぼなAI」を開発し、業務に実装した。むすぼなAIは同年10月から外販しており、新しいビジネスの創出につながっている。同社は25年5月に生成AI開発の専任組織「AILab」を発足させ、体制を強化。患者のケアに関する情報共有の会議の議事録を作成するAIを開発し、25年11月に「ぷらまどAI」として外販を予定している。
やさしい手
香取 幹 社長
やさしい手の香取幹社長は「AWSジャパンからのサポートを受けつつ、知識ゼロからでも先端技術の活用に取り組んだ内製化力や企業文化の変革が成功要因」と振り返った。
生成AIの普及によるクラウドへの需要の高まりを受け、地方での販売力の強化にも取り組む。25年はパートナーの人材育成に注力するとして、同社の営業マネージャーが数カ月かけてパートナーの営業チームに集中トレーニングを提供。クラウドベースのシステム構築の提案力を強化する。また、各地域の高専との連携で地方のデジタル人材育成も支援する方針だ。