アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)は5月8日、パートナー戦略に関する記者説明会を開いた。注力領域として「生成AI」「マイグレーション・モダナイゼーション」「AWS Marketplace」「人材育成」の四つを設定。生成AIは、顧客向けのサービスに加え、開発効率化のための活用をSIerらパートナーに促していく。加えて、地方を含む広いエリアで、同社の技術認定を受ける人材育成を推進する。
(堀 茜)
渡邉宗行 常務
同社は生成AIを、パートナーの「ビジネスのため」と「生産性向上のため」に分類。パートナーのビジネス拡大を後押しする仕組みとしては、AWSが提供する「Amazon Nova」を含む九つの大規模言語モデルから選択して利用できる生成AIアプリケーション構築ツール「Amazon Bedrock」をマネージドサービスとして提供。常務執行役員の渡邉宗行・パートナーアライアンス事業統括本部事業統括本部長は「目的に合わせた開発のために、LLMをスイッチしやすくし、選択肢を増やしている」とメリットを強調した。
一方、パートナー自身の生産性向上の文脈では、システム開発を支援する「Amazon Q Developer」を展開している。システム開発の際に設計、テスト、運用など全ての工程に生成AIを適用し、開発コストの低減を実現する。日本のSIerはエンドツーエンドで顧客向けに開発をするので、Q Developerのメリットがより大きいと説明。国内パートナーの間でも開発への適応で検証が進んでいるという。渡邉常務は「生成AIはすでにビジネスの中心に組み込まれており、パートナー企業にも積極的に生成AIを活用してもらいたい」と呼び掛けた。
マイグレーション・モダナイゼーションの領域では、クラウド移行を総合的に支援する「ITトランスフォーメーション(ITX)パッケージ」を紹介。既存のシステム資産を効率的にAWSクラウドへ移行し、その後のアーキテクチャー最新化まで総合的に支援する。多くのパートナーにITXパッケージの活用を促し、顧客のクラウド移行を推進したい考え。メインフレームからの移行や、ライセンス変更の影響を受けたVMware環境の移行、「ECC6.0」のサポート期限が2027年に迫るSAPからの移行などにもビジネスチャンスがあるとした。
AWS Marketplaceは、25年5月に製品情報の日本語化が完了。日本での利用促進のため、国内のISVとSIerのマッチングを推進し、日本の顧客が最適なソリューションを選択し導入できる環境を整える。人材育成については、デジタルトレーニングプラットフォーム「AWS Skill Builder」に、600以上のコンテンツを用意。地方を含めた幅広いエリアに効率的にトレーニングを届ける。生成AIの高度なスキルを持つパートナー向けの「生成AIコンピテンシー」や、マイグレーションに強みを持つパートナーを「マイグレーション&モダナイゼーションコンピテンシー」に認定しており、認定を得るための技術支援を行うとした。
渡邉常務は「あらゆる業種、地域、規模の顧客に、全方位でクラウドのメリットを届け、ビジネスに貢献していく。共感いただけるパートナーと推進していきたい」と述べた。