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AWSの生成AI新モデル「Nova」が登場 年次イベント「re:Invent 2024」開催
2024/12/19 09:00
週刊BCN 2024年12月16日vol.2041掲載
米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)が恒例の年次イベント「re:Invent 2024」を米ラスベガスで開催した。2024年にAWSの新たなトップとなったマット・ガーマンCEOに加えて、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)のアンディ・ジャシーCEOが久々に登場。目玉となったのは新たな生成AIモデル「Amazon Nova」で、AIワークロードの実行基盤となる半導体を含むインフラ技術でも多数の発表が行われた。
(文/大畑直悠・堀 茜、編集/日高 彰)
クラウドインフラでは圧倒的な地位にありながら生成AIでは他社の猛追を受けるAWSが、今回のre:Inventで目玉として発表したのが、Bedrockから利用できる新しい生成AI「Amazon Nova」だ。従来のTitanよりも高精度な生成AIモデルの提供で、Bedrockによる生成AIの活用支援だけではなく、生成AIモデルそのものの開発競争でも競合に対抗していく姿勢を改めて示すかたちになった。
米Amazon.com
アンディ・ジャシー CEO
米国時間12月3日の基調講演では、かつてAWS事業の立ち上げを主導した元CEOで、現在は親会社アマゾン・ドット・コムのCEOを務めるアンディ・ジャシー氏がステージに登場。長らくAWSの“顔”として知られた人物の登壇に会場は沸き立った。ジャシーCEOはアマゾングループでの生成AIの活用事例を紹介した後、今回のイベントの本題となるNovaを発表した。
ジャシーCEOはAWSの生成AI戦略について、「(基本は)さまざまな生成AIモデルのプロバイダーと深いパートナーシップを築くこと」とした上で、「人間と同じように生成AIモデルもあらゆる分野に精通していることはあり得ない。コストやレイテンシーの低さといったニーズや、(特定の生成AIモデルを使いたい)タイミングはさまざまなため、各顧客がベストな選択や組み合わせができるように支援する」と強調。続けて「明日の選択は今日とは違うかもしれない」とも話し、多様な生成AIモデルを必要に応じて常に利用可能にする重要性を訴えた。今回、BedrockにNovaを追加したことで、AWS自身も生成AIにおける顧客の選択肢を広げることに寄与することになる。
Novaはテキスト生成モデルとして「Micro」「Lite」「Pro」「Premier」の四つのラインアップを展開する。Microはテキストのみ処理できるモデルで、Lite、Pro、Premierはテキストに加え、画像や動画の処理にも対応する。Micro、Lite、Proはすでに日本語対応済み。ジャシーCEOは「Novaは他社の基盤モデルと比較して費用対効果は75%も優れ、性能面でもベンチマークのデータから、競合優位性があり業界をリードすることが示されている」とし、コストパフォーマンスの高さをメリットとして訴えた。
また、画像生成に特化した「Nova Canvas」と、動画生成に特化した「Nova Reel」も提供する。ジャシーCEOは「ユーザーは生成AIに対して、テキストを書き起こす以上のことを期待している。広告やマーケティングにおいて、画像や動画を自力で作成するのは困難なため、生成AIで自動化したいと考えている」と説明。Canvasでは、自然言語で画像の生成や色調やレイアウトを編集する機能などを備える。Reelは6秒以内の動画を生成可能で、将来的には2分間の動画を生成できるようにする。
さらに、Novaの新しい生成AIモデルの開発にも着手しているといい、音声対音声の処理が可能で人間との自然な会話を可能にするモデル「Speech-to-Speech」と、テキスト、音声、動画などマルチモーダルの入出力が可能な「Any-to-Any」を25年に提供予定だと明かした。
また、生成AIモデルの流通を促進する「Bedrock Marketplace」の一般提供を東京を含む14リージョンで開始した。100以上の生成AIモデルをBedrockのAPIで利用可能になり、生成AIモデルを変えてもアプリケーションの改修を最低限にできる。国内企業ではPreferred Networks、カラクリ、ストックマークなどが提供するモデルが利用できる。
このほか、ユーザーからのリクエストに基づいて、最も低いコストで必要な品質の応答が期待できるモデルにリクエストをルーティングする「Bedrock Intelligent Prompt Routing」のプレビューを開始。単純な問いかけは小さいモデルに、複雑な問いかけは大きなモデルに問い合わせるといった制御を自動化し、コストを削減する。Bedrock上で複数回呼び出すプロンプトをキャッシュしてコストを抑える「Bedrock Prompt Caching」や、特定のユースケースに限り、小さなモデルでも大規模なモデルと同等の能力を持てるようにする「モデルの蒸留(Model Distillation)」を支援する機能なども発表した。
米AWS
マット・ガーマン CEO
AWSのマット・ガーマンCEOは「生成AIアプリは何らかの推論と分けて考えることは難しく、このため適切なコストやパフォーマンス、セキュリティーのマネジメントが可能な、拡張性のあるプラットフォームが必要になる。生成AIをただ概念とするのではなく、そこから恩恵を受けるために存在するのがBedrockの意義だ」と説明した。
AWSでは、Armアーキテクチャーをベースとした独自プロセッサー「Graviton」を開発し、これを適用したインスタンスを18年から提供している。今回のre:Inventでは、最新版の「Graviton4」を使ったサービスの利用が拡大していることにも言及。ガーマンCEOは「(仮想サーバー機能の)EC2では、GravitonシリーズのようなArmベースの独自CPUなど、他社に先駆けてユニークなカスタムシリコンを提供してきた」と述べ、自社設計のArmプロセッサーが、x86アーキテクチャーのプロセッサーに比べて高いコストパフォーマンスと電力効率を実現していることをアピールした。「差別化した価値」として、Gravitonは演算コストを47%、温室効果ガスの排出を62%抑えることができた事例に触れ、「トップ1000の顧客の90%が(Gravitonを)利用しており、イノベーションに貢献している」と強調。AWS独自のプロセッサーはコスト面に優れており、利用が大幅に拡大しているとした。
さらに、23年に発表した生成AI学習アクセラレーターの「Trainium2」16基から構成される「Trn2インスタンス」の一般提供を開始するとともに、Trn2を接続してスケールアップし、64基のTrainium2を利用できるようにした「Trn2 UltraServers」を発表した。P5などGPUベースのインスタンスと比較して、30~40%高いコストパフォーマンスを実現しており、GPUよりも低価格なAI学習ソリューションを探している顧客向けのサービスとなる。
具体的な活用事例として、米Apple(アップル)の担当者が登壇した。同社は24年、iOSやmacOSから利用できる、文章や画像を生成するエンドユーザー向けのAIソリューション「Apple Intelligence」を発表した。このサービスの構築に、AWSの独自開発プロセッサーを利用していることを明らかにし、その理由を「高性能なアクセラレーターをスケールをもって提供してもらっている。AIや機械学習のライフサイクルでAWSを活用している」と説明した。
(文/大畑直悠・堀 茜、編集/日高 彰)

「明日の選択は今日とは違うかもしれない」
AWSは、さまざまなベンダーが提供する生成AIモデルを活用して、生成AIアプリケーションの構築やデプロイを支援するサービス「Bedrock」を提供している。また、米OpenAI(オープンエーアイ)の「GPT」シリーズなどに相当する、AWS独自の生成AIの基盤モデルとして「Titan」を用意していた。ただ、基盤モデルの領域では、OpenAIを支援する米Microsoft(マイクロソフト)や、「Gemini」を提供する米Google(グーグル)に比べると、存在感で一歩出遅れていた。クラウドインフラでは圧倒的な地位にありながら生成AIでは他社の猛追を受けるAWSが、今回のre:Inventで目玉として発表したのが、Bedrockから利用できる新しい生成AI「Amazon Nova」だ。従来のTitanよりも高精度な生成AIモデルの提供で、Bedrockによる生成AIの活用支援だけではなく、生成AIモデルそのものの開発競争でも競合に対抗していく姿勢を改めて示すかたちになった。
アンディ・ジャシー CEO
米国時間12月3日の基調講演では、かつてAWS事業の立ち上げを主導した元CEOで、現在は親会社アマゾン・ドット・コムのCEOを務めるアンディ・ジャシー氏がステージに登場。長らくAWSの“顔”として知られた人物の登壇に会場は沸き立った。ジャシーCEOはアマゾングループでの生成AIの活用事例を紹介した後、今回のイベントの本題となるNovaを発表した。
ジャシーCEOはAWSの生成AI戦略について、「(基本は)さまざまな生成AIモデルのプロバイダーと深いパートナーシップを築くこと」とした上で、「人間と同じように生成AIモデルもあらゆる分野に精通していることはあり得ない。コストやレイテンシーの低さといったニーズや、(特定の生成AIモデルを使いたい)タイミングはさまざまなため、各顧客がベストな選択や組み合わせができるように支援する」と強調。続けて「明日の選択は今日とは違うかもしれない」とも話し、多様な生成AIモデルを必要に応じて常に利用可能にする重要性を訴えた。今回、BedrockにNovaを追加したことで、AWS自身も生成AIにおける顧客の選択肢を広げることに寄与することになる。
Novaはテキスト生成モデルとして「Micro」「Lite」「Pro」「Premier」の四つのラインアップを展開する。Microはテキストのみ処理できるモデルで、Lite、Pro、Premierはテキストに加え、画像や動画の処理にも対応する。Micro、Lite、Proはすでに日本語対応済み。ジャシーCEOは「Novaは他社の基盤モデルと比較して費用対効果は75%も優れ、性能面でもベンチマークのデータから、競合優位性があり業界をリードすることが示されている」とし、コストパフォーマンスの高さをメリットとして訴えた。
また、画像生成に特化した「Nova Canvas」と、動画生成に特化した「Nova Reel」も提供する。ジャシーCEOは「ユーザーは生成AIに対して、テキストを書き起こす以上のことを期待している。広告やマーケティングにおいて、画像や動画を自力で作成するのは困難なため、生成AIで自動化したいと考えている」と説明。Canvasでは、自然言語で画像の生成や色調やレイアウトを編集する機能などを備える。Reelは6秒以内の動画を生成可能で、将来的には2分間の動画を生成できるようにする。
さらに、Novaの新しい生成AIモデルの開発にも着手しているといい、音声対音声の処理が可能で人間との自然な会話を可能にするモデル「Speech-to-Speech」と、テキスト、音声、動画などマルチモーダルの入出力が可能な「Any-to-Any」を25年に提供予定だと明かした。
国産勢のモデルもBedrockで使用可能に
Bedrock関連のアップデートも発表した。まず、米poolside(プールサイド)が提供する、コードの生成、テスト記述、リファクタリング、ドキュメンテーションなどに対応するモデル「malibu」と、開発者のニーズを予測しコードを補完するモデルの「point」が利用可能となり、生成AIよるソフトウェア開発の支援をさらに加速する。米Luma AI(ルマエーアイ)のテキストや画像、動画を生成するモデル「Luma Ray 2」、英Stability AI(スタビリティーエーアイ)のテキストから画像を生成するモデル「Stable Diffusion 3.5」にも対応していく。また、生成AIモデルの流通を促進する「Bedrock Marketplace」の一般提供を東京を含む14リージョンで開始した。100以上の生成AIモデルをBedrockのAPIで利用可能になり、生成AIモデルを変えてもアプリケーションの改修を最低限にできる。国内企業ではPreferred Networks、カラクリ、ストックマークなどが提供するモデルが利用できる。
このほか、ユーザーからのリクエストに基づいて、最も低いコストで必要な品質の応答が期待できるモデルにリクエストをルーティングする「Bedrock Intelligent Prompt Routing」のプレビューを開始。単純な問いかけは小さいモデルに、複雑な問いかけは大きなモデルに問い合わせるといった制御を自動化し、コストを削減する。Bedrock上で複数回呼び出すプロンプトをキャッシュしてコストを抑える「Bedrock Prompt Caching」や、特定のユースケースに限り、小さなモデルでも大規模なモデルと同等の能力を持てるようにする「モデルの蒸留(Model Distillation)」を支援する機能なども発表した。
マット・ガーマン CEO
AWSのマット・ガーマンCEOは「生成AIアプリは何らかの推論と分けて考えることは難しく、このため適切なコストやパフォーマンス、セキュリティーのマネジメントが可能な、拡張性のあるプラットフォームが必要になる。生成AIをただ概念とするのではなく、そこから恩恵を受けるために存在するのがBedrockの意義だ」と説明した。
独自設計のCPU「Graviton4」コスト面の優位性で利用拡大
基調講演では、生成AIの利用拡大に対応するためのインフラ技術の説明・発表にも多くの時間が割かれた。ガーマンCEOは、米NVIDIA(エヌビディア)が24年3月に発表した次世代GPU「Blackwell」を搭載した「P6インスタンス」を、25年初頭に投入することを明らかにした。BlackwellベースのP6を投入することで、従来の2.5倍のコンピューティング能力を提供し、高まり続けるGPUへのニーズに対応する考えだ。AWSでは、Armアーキテクチャーをベースとした独自プロセッサー「Graviton」を開発し、これを適用したインスタンスを18年から提供している。今回のre:Inventでは、最新版の「Graviton4」を使ったサービスの利用が拡大していることにも言及。ガーマンCEOは「(仮想サーバー機能の)EC2では、GravitonシリーズのようなArmベースの独自CPUなど、他社に先駆けてユニークなカスタムシリコンを提供してきた」と述べ、自社設計のArmプロセッサーが、x86アーキテクチャーのプロセッサーに比べて高いコストパフォーマンスと電力効率を実現していることをアピールした。「差別化した価値」として、Gravitonは演算コストを47%、温室効果ガスの排出を62%抑えることができた事例に触れ、「トップ1000の顧客の90%が(Gravitonを)利用しており、イノベーションに貢献している」と強調。AWS独自のプロセッサーはコスト面に優れており、利用が大幅に拡大しているとした。
さらに、23年に発表した生成AI学習アクセラレーターの「Trainium2」16基から構成される「Trn2インスタンス」の一般提供を開始するとともに、Trn2を接続してスケールアップし、64基のTrainium2を利用できるようにした「Trn2 UltraServers」を発表した。P5などGPUベースのインスタンスと比較して、30~40%高いコストパフォーマンスを実現しており、GPUよりも低価格なAI学習ソリューションを探している顧客向けのサービスとなる。
具体的な活用事例として、米Apple(アップル)の担当者が登壇した。同社は24年、iOSやmacOSから利用できる、文章や画像を生成するエンドユーザー向けのAIソリューション「Apple Intelligence」を発表した。このサービスの構築に、AWSの独自開発プロセッサーを利用していることを明らかにし、その理由を「高性能なアクセラレーターをスケールをもって提供してもらっている。AIや機械学習のライフサイクルでAWSを活用している」と説明した。
リージョンをまたいで無制限に拡張できるDB
AI以外の機能発表で注目を集めたのが、AWSが提供するマネージド型のリレーショナルデータベース(DB)サービス「Aurora」の機能拡張となる「Aurora DSQL」だ。マルチリージョンに置かれるDB間でほぼレイテンシーなくデータを同期し、一般的な分散SQL DBの最大4倍高速に読み書きを可能とすることで、事実上無制限のスケーラビリティーを実現する。世界各地に散らばるDBの整合性が担保されるため、アプリケーション開発者などが、より容易にDBを活用することが可能になる。オープンソースDBの「PostgreSQL」とも互換性がある。ガーマンCEOは「複数リージョンのDBを一貫性をもって使うことができる」と解説。「当社は、AかBかを選ぶのではなく、AもBも使えるように制限をなくしていく」と述べた。
米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)が恒例の年次イベント「re:Invent 2024」を米ラスベガスで開催した。2024年にAWSの新たなトップとなったマット・ガーマンCEOに加えて、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)のアンディ・ジャシーCEOが久々に登場。目玉となったのは新たな生成AIモデル「Amazon Nova」で、AIワークロードの実行基盤となる半導体を含むインフラ技術でも多数の発表が行われた。
(文/大畑直悠・堀 茜、編集/日高 彰)
クラウドインフラでは圧倒的な地位にありながら生成AIでは他社の猛追を受けるAWSが、今回のre:Inventで目玉として発表したのが、Bedrockから利用できる新しい生成AI「Amazon Nova」だ。従来のTitanよりも高精度な生成AIモデルの提供で、Bedrockによる生成AIの活用支援だけではなく、生成AIモデルそのものの開発競争でも競合に対抗していく姿勢を改めて示すかたちになった。
米Amazon.com
アンディ・ジャシー CEO
米国時間12月3日の基調講演では、かつてAWS事業の立ち上げを主導した元CEOで、現在は親会社アマゾン・ドット・コムのCEOを務めるアンディ・ジャシー氏がステージに登場。長らくAWSの“顔”として知られた人物の登壇に会場は沸き立った。ジャシーCEOはアマゾングループでの生成AIの活用事例を紹介した後、今回のイベントの本題となるNovaを発表した。
ジャシーCEOはAWSの生成AI戦略について、「(基本は)さまざまな生成AIモデルのプロバイダーと深いパートナーシップを築くこと」とした上で、「人間と同じように生成AIモデルもあらゆる分野に精通していることはあり得ない。コストやレイテンシーの低さといったニーズや、(特定の生成AIモデルを使いたい)タイミングはさまざまなため、各顧客がベストな選択や組み合わせができるように支援する」と強調。続けて「明日の選択は今日とは違うかもしれない」とも話し、多様な生成AIモデルを必要に応じて常に利用可能にする重要性を訴えた。今回、BedrockにNovaを追加したことで、AWS自身も生成AIにおける顧客の選択肢を広げることに寄与することになる。
Novaはテキスト生成モデルとして「Micro」「Lite」「Pro」「Premier」の四つのラインアップを展開する。Microはテキストのみ処理できるモデルで、Lite、Pro、Premierはテキストに加え、画像や動画の処理にも対応する。Micro、Lite、Proはすでに日本語対応済み。ジャシーCEOは「Novaは他社の基盤モデルと比較して費用対効果は75%も優れ、性能面でもベンチマークのデータから、競合優位性があり業界をリードすることが示されている」とし、コストパフォーマンスの高さをメリットとして訴えた。
また、画像生成に特化した「Nova Canvas」と、動画生成に特化した「Nova Reel」も提供する。ジャシーCEOは「ユーザーは生成AIに対して、テキストを書き起こす以上のことを期待している。広告やマーケティングにおいて、画像や動画を自力で作成するのは困難なため、生成AIで自動化したいと考えている」と説明。Canvasでは、自然言語で画像の生成や色調やレイアウトを編集する機能などを備える。Reelは6秒以内の動画を生成可能で、将来的には2分間の動画を生成できるようにする。
さらに、Novaの新しい生成AIモデルの開発にも着手しているといい、音声対音声の処理が可能で人間との自然な会話を可能にするモデル「Speech-to-Speech」と、テキスト、音声、動画などマルチモーダルの入出力が可能な「Any-to-Any」を25年に提供予定だと明かした。
(文/大畑直悠・堀 茜、編集/日高 彰)

「明日の選択は今日とは違うかもしれない」
AWSは、さまざまなベンダーが提供する生成AIモデルを活用して、生成AIアプリケーションの構築やデプロイを支援するサービス「Bedrock」を提供している。また、米OpenAI(オープンエーアイ)の「GPT」シリーズなどに相当する、AWS独自の生成AIの基盤モデルとして「Titan」を用意していた。ただ、基盤モデルの領域では、OpenAIを支援する米Microsoft(マイクロソフト)や、「Gemini」を提供する米Google(グーグル)に比べると、存在感で一歩出遅れていた。クラウドインフラでは圧倒的な地位にありながら生成AIでは他社の猛追を受けるAWSが、今回のre:Inventで目玉として発表したのが、Bedrockから利用できる新しい生成AI「Amazon Nova」だ。従来のTitanよりも高精度な生成AIモデルの提供で、Bedrockによる生成AIの活用支援だけではなく、生成AIモデルそのものの開発競争でも競合に対抗していく姿勢を改めて示すかたちになった。
アンディ・ジャシー CEO
米国時間12月3日の基調講演では、かつてAWS事業の立ち上げを主導した元CEOで、現在は親会社アマゾン・ドット・コムのCEOを務めるアンディ・ジャシー氏がステージに登場。長らくAWSの“顔”として知られた人物の登壇に会場は沸き立った。ジャシーCEOはアマゾングループでの生成AIの活用事例を紹介した後、今回のイベントの本題となるNovaを発表した。
ジャシーCEOはAWSの生成AI戦略について、「(基本は)さまざまな生成AIモデルのプロバイダーと深いパートナーシップを築くこと」とした上で、「人間と同じように生成AIモデルもあらゆる分野に精通していることはあり得ない。コストやレイテンシーの低さといったニーズや、(特定の生成AIモデルを使いたい)タイミングはさまざまなため、各顧客がベストな選択や組み合わせができるように支援する」と強調。続けて「明日の選択は今日とは違うかもしれない」とも話し、多様な生成AIモデルを必要に応じて常に利用可能にする重要性を訴えた。今回、BedrockにNovaを追加したことで、AWS自身も生成AIにおける顧客の選択肢を広げることに寄与することになる。
Novaはテキスト生成モデルとして「Micro」「Lite」「Pro」「Premier」の四つのラインアップを展開する。Microはテキストのみ処理できるモデルで、Lite、Pro、Premierはテキストに加え、画像や動画の処理にも対応する。Micro、Lite、Proはすでに日本語対応済み。ジャシーCEOは「Novaは他社の基盤モデルと比較して費用対効果は75%も優れ、性能面でもベンチマークのデータから、競合優位性があり業界をリードすることが示されている」とし、コストパフォーマンスの高さをメリットとして訴えた。
また、画像生成に特化した「Nova Canvas」と、動画生成に特化した「Nova Reel」も提供する。ジャシーCEOは「ユーザーは生成AIに対して、テキストを書き起こす以上のことを期待している。広告やマーケティングにおいて、画像や動画を自力で作成するのは困難なため、生成AIで自動化したいと考えている」と説明。Canvasでは、自然言語で画像の生成や色調やレイアウトを編集する機能などを備える。Reelは6秒以内の動画を生成可能で、将来的には2分間の動画を生成できるようにする。
さらに、Novaの新しい生成AIモデルの開発にも着手しているといい、音声対音声の処理が可能で人間との自然な会話を可能にするモデル「Speech-to-Speech」と、テキスト、音声、動画などマルチモーダルの入出力が可能な「Any-to-Any」を25年に提供予定だと明かした。
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- 国産勢のモデルもBedrockで使用可能に
- 独自設計のCPU「Graviton4」コスト面の優位性で利用拡大
- リージョンをまたいで無制限に拡張できるDB
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