IT革命第二幕 ~e-Japanのゆくえ~

<IT革命第二幕 ~e-Japanのゆくえ~>第2章 18.地理情報システム

2002/01/07 16:18

週刊BCN 2002年01月07日vol.923掲載

 地理情報システム(GIS)アクションプログラム2002-2005の素案が昨年12月にまとまり、公表された。今月10日までパブリックコメントを募集し、今月中に正式決定される見通しだ。

 政府のGISに関する取り組みは、95年に内閣官房が主宰して国土交通省、総務省、農林水産省、経済産業省など関係省庁で構成するGIS関係省庁連絡会議が設置されて本格的にスタート。翌96年には01年度までの長期計画が決定され、基盤整備が図られてきた。

 今回のアクションプログラムは、これまでの計画が01年度に終了するのを機に、01年3月のe-Japan重点計画で打ち出されたGISに関する基本方針を具体化するために策定されたもので、「重点計画との整合性を取るために05年度までの4年計画とした」(国土交通省国土計画局総務課国土情報整備室・筒井智紀課長補佐)。

 これまで政府は、地理情報を電子化し、インターネットを通じて提供できる体制の整備に力を入れてきた。とくに地理情報の中核となる2500分の1(都市計画区域内)と2万5000分の1(全国)の数値地図、街区レベルの位置参照情報(都市計画区域内)の3種類の電子化がほぼ完成し、一部はインターネットでの提供が開始されている。このほか海図の電子化や、国土交通省の道路管理などの図面の電子化も準備中だ。

 政府が所有する地理情報を検索できるサービス「地理情報クリアリングハウス」も昨年3月から運用を開始した。各省庁ごとに所有する地図のデータベースを構築し、国土地理院に設置された検索システムを通じて同時一斉検索を可能にしたもので、「昨年夏までの半年間で10万アクセスの利用があった」(筒井課長補佐)という。

 新しいアクションプログラムでは、これまでの成果を踏まえて05年度までにGISを利用する基盤環境をほぼ完成させるとともに、地方自治体を含めてGISを活用した行政サービスを実現するという目標を掲げている。プログラムは大きく5つの柱で構成されている。(1)国土空間データ基盤の標準化、(2)制度・ガイドラインの整備、(3)地理情報の電子化と提供の推進、(4)GISの本格的な普及支援、(5)GISを活用した行政の効率化─である。

 最も重要な(1)の標準化作業は、国際化を含めて積極的に対応する考えだ。政府では99年にデータ交換方法などに関する「地理情報標準」を定めたが、02年度には国際標準化機構(ISO)で国際規格として確定する見通しで、順次JIS(日本工業規格)化を進める。インターネットを通じて地理情報の相互流通を実現するために日本で開発したプロトコル(通信手順)「G-XML」も、05年をメドに国際規格化に向けた提案活動を展開していく。

 標準化が実現すると、政府が提供した地図情報の上にさまざまな付加価値情報を階層的に重ね合わせて利用できる環境が整うことになる。(2)では、政府が提供する地理情報の著作権や2次利用に関する条件などのガイドラインを02年度中にまとめる方針を打ち出している。

 (3)では、電子地図のメンテナンスのあり方を明記。数値地図2万5000と街区レベル位置参照情報は、年1回程度の更新を図る。また、一般ユーザーがインターネットのブラウザ上で地理情報を手軽に閲覧できるように、03年度には数値地図2500、同2万5000などを、ウェブマッピングシステムを使って提供する方向だ。

 GISと関連技術の整備によりすでにGPS(全地球測位システム)は、カーナビ市場を育て、携帯電話の位置情報サービスなどを生み出している。「今回のプログラムには、全国に約1000か所ある電子基準点のデータのリアルタイム配信も盛り込んでいる。これでGPSを補正すれば、位置情報の精度も格段に高まる」(筒井課長補佐)としている。
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