どうなる? PCリサイクル

<どうなる? PCリサイクル>11.中間処理の課題

2002/01/21 16:18

週刊BCN 2002年01月21日vol.925掲載

すでに処理能力は限界

 中田屋(中田彪社長)が業務停止命令を受けた──。

 昨年末、廃棄物業界を揺るがせた事件である。01年11月21日-12月4日まで14日間の業務停止を命じた東京都環境局によれば、「中田屋が、収集運搬業者のエコートランスポート(山本公弘社長)と、虚偽の記載をした産業廃棄物管理票(マニフェスト)を共謀して作成、使用した」としている。

 マニフェストとは、産廃の不法投棄を防止する管理票であり、故意に事実と異なる書類をつくったと指摘している。

 中田屋とは、都内で数少ない中間処理許可をもつ中間処理業者である。中田屋の金子哲也取締役は、この件について、「ノーコメント」としている。

 別の関係者は「公害対策で規制が厳しく、一方で処理量が増え続け、リサイクル目標が年々高まるなか、中間処理業者だけを責められない。都内の中間処理は、どのみち中田屋など数社しかないのだからね」と、肩をすくめる。

 中間処理業は、工場設備をともなうため、ダイオキシンや重金属汚染などの対策も踏まえたうえで、近隣地域や周辺住民の理解を得なければならないなど、開業までの敷居が高い。廃棄物の資格をもつ廃棄物処理業者の多くは収集運搬のみで、中間処理の許可や工場設備(大型機械などのプラント)はもっていない。都内では中田屋のほかに、有明興業(大川健治社長)など、ごく少数の事業者しか中間処理許可と設備をもっていないのが現状である。

 パソコンリサイクルで重要な問題の1つが「中間処理」である。使用済みの家電やパソコンなどの資源ゴミは、収集運搬業者を経て、中間処理業者のところへ集められる。

 中間処理施設では、鉄や非鉄などを分別し、再資源化すると同時に、資源にならなかったゴミは最終処分業者の手に渡り、埋め立て地などに処分する。

 有明興業が34%出資し、そのほか日立製作所やソニー、シャープなどが出資する家電リサイクル専門の中間処理業者、東京エコリサイクル(佐野強社長)では、「家電リサイクルだけでも手一杯なのに、パソコンリサイクルまで手が回らない」と、パソコンの中間処理は行わない方針。一方、有明興業も、「工場施設の増設など処理案件が多く、とてもパソコンなど構ってられない」と話す。

 パソコンの2002年の年間排出量予測は電子情報技術産業協会(JEITA)調べで事業系が約7万トン、家庭系が1万1000トンである。産業廃棄物(企業からの排出総量)の年間約4億トン、一般廃棄物(家庭からの排出総量)の同約5000万トンに比べれば、微々たる数量。パソコンが、「ゴミのなかのゴミ」と言われるゆえんである。

 パソコンにおける再資源化率(製品の中古再販売、部品の再利用、鉄類など部材の再資源化などを含む)の目標値は、デスクトップ本体で50%、ノート本体で20%、CRTモニタで55%、液晶モニタで55%である。

 この再資源化目標値が達成できたとすれば、平均重量30キロのデスクトップパソコン(CRTモニタを含む)の鉄などの回収量は、15-16キロになる。

 家庭用パソコンのリサイクルが始まっていない現時点においては、自治体が「粗大ゴミ」などとして、使用済みパソコンを回収・処理している。

 自治体の低い処理能力では、現状で同約4.5キロ程度しか回収できていないと言われている。

 自治体の粗大ゴミ処理施設に搬入する以外にも、直接、埋め立てされるケースもあり、回収率はさらに低い。

 パソコンにおける再資源化率の目標を達成するためには、収集運搬で回収率を高め、中古利用(リユース)を促進する必要がある。

 同時に、中間処理における鉄やアルミなど有効資源の回収率(リサイクル)を高めなければならない。

 しかし、現在の中間処理施設の能力には上述のような限界がある。限界ゆえに、不法投棄などを誘発し、それに対する行政処分も少なくない。

 従って、家電リサイクルの「東京エコリサイクル」のように、パソコンメーカーと中間処理ノウハウをもつ事業者との合弁をつくるなど、中間処理の許容量そのものを拡大する施策を打ち出す必要に迫られている。(安藤章司)
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