どうなる? PCリサイクル

<どうなる? PCリサイクル>13.難航する審議

2002/02/04 16:18

週刊BCN 2002年02月04日vol.927掲載

 パソコンリサイクルの審議が難航をきわめている。経産省産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会の第5回パソコンリサイクル検討会は、昨年12月13日に開いたきり、意見の調整がつかず、次の検討会を開けない状態に陥った。しかし、水面下では、この膠着状態を打破し、遅くとも2月下旬には検討会を再開する努力が続いている。

「1月中の決着」は延期

 永田勝也座長(早稲田大学理工学部教授)は、前回の検討会で、「本来は2001年12月中に報告書を取りまとめ、パブリックコメントを集める段階まで漕ぎ着けたかった。私の責任でもあるが、次回の検討会では、既販パソコンを販売時徴収で上乗せする場合の料金算出などもしっかり出して、詰めた議論をしたい。次回は1月中旬から下旬に開催する」と、暗に今年1月の段階で、最終的な意見を取りまとめたいとの意向を示していた。

 ところが、以来2か月近く、水面下で各委員側と業界側がさまざまな交渉を続けたにも関わらず、最終的な調整がつかず、当初予定の「1月中の決着」を延期せざるを得ない状況となった。

 電子情報技術産業協会(JEITA)パソコンリサイクル担当幹部は、「次の第6回検討会の机につく時は、互いに物別れで終わることはない」と、一気に結論までもち込みたいと意気込む。

 だが、この最終調整が予想以上に難航し、「当初、永田座長の考え通り、1月下旬で日程調整をしていたが、双方意見の折り合いがつかず、2月初旬から中旬へずれ込み、今では2月下旬までもつれることになった」(別の関係者)と明かす。経産省側も「こればかりは、各委員の方々の考えもあり、どうしようもない」と困り果てた様子。

 委員の間では、「2月下旬に決着をつけ、3月末までに報告書をまとめ、来年度(02年4月)から具体的な準備や市民向け広報の準備を始めるという筋書きが妥当だろう」という見方が多い。

 かつて、00年12月に取りまとめた報告書では、家庭用パソコンのリサイクルは「02年度中を目途に適切な方策を導入する」としているが、現状では「02年4-9月までが準備期間。02年10月-03年3月までが市民向けの告知宣伝期間。実際の実施は早くて03年4月から、遅ければ03年10月からになる」(関係者)と話す。

 これまでの計5回の検討会では、「排出時徴収」か「販売時徴収」かの料金徴収の議論に終始しており、実際の回収方法については深い議論にまで至っていない。これは、資源有効利用促進法では、メーカーの自主回収が主体となるため、JEITAなどの合意を取り付ければ、「あとはメーカーの責任で、宅配便を使うなり、産廃事業者を使うなりして回収すればいい」という考え方が根底にあるからだ。

 JEITAは、前回の第5回検討会で、「新品パソコンに限り、販売時徴収による将来充当企業内資金管理方式」を打ち出し、既販パソコンについては従来通り「排出時徴収」にするという「妥協案」を出した。この妥協案のなかで、メーカー側は「メーカーの責任範囲外ではあるが、消費者の負担により指定回収場所までの回収が行える仕組みを検討する」と、回収方法について言及している。

 つまりメーカーは、「回収場所からリサイクルまで」の責任をもつが、「家庭から回収場所まで」の責任は消費者が負うという考え方だ。この方法では、「どれだけ回収率を高められるのか」という問題が出てくると同時に、「一般廃棄物である排出パソコンを取り扱う許可を取得した回収場所を、どれだけ確保できるか」という問題も出てくる。

 いずれにしても、「2月下旬」とされる第6回目の検討会では、「前回提出した妥協案で決着をつける」とするJEITA側と、「既販パソコンについても販売時徴収でカバーすべき」との考えをもつ委員の間で、何らかの折り合いがつく可能性が高い。当然、回収率の目標設定も決まる。この妥結の後、「廃棄物許可の問題を巡る省庁間の調整」が始まり、JEITAがかねてから主張している「販売時徴収による積立金を非課税にする措置」などの検討に入るものと思われる。

 万が一、今年度末(02年3月末)までに報告書をまとめなければ、ずるずると来年度まで議論が長引き、03年度上期どころか、下期からの実施も危うくなりかねない。(安藤章司)
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