The Project

<The Project ―KDDI egnavigation 開発現場の風景―>第4回 新しい位置検索技術

2002/02/25 16:18

●原理は三角測量

 00年夏から、日立製作所が開発した新しい位置検索技術の実験が始まった。

 この技術は、複数の基地局から発信される電波を同時に受けられる「cdmaOne」の特性を利用し、それぞれの電波の到達時間の差から割り出した基地局までの距離をもとに、三角測量の要領で現在位置を割り出す。そのうえにGPS(全地球測位システム)の情報を組み合わせる。これで、基地局が少ない地域でも、GPSからの情報が受けられない屋内でも正確に位置がわかるという仕組みだ。

 だが、GPSを使えば、本当に誤差はなくなるのか。

 モバイル・コンテンツ企画開発室では、00年7月に始めた位置検索サービスの大きな泣きどころ、実際の場所と検索結果の誤差に悩まされていた。

 企画開発室のメンバーたちは、片方で、「GPSで、問題は解決できるはずだ」と思いながら、まだ自ら試してみる段階まで電話機の開発が進んでいないことから、もう一方で、「本当に精度はいいのか。しかも、その機能を携帯電話に入れられるのか」と、半信半疑の気持ちがあった。

 それでも、GPSサービスを視野に入れながらサービス展開を考えていかなければならなかった。前身のサービスだけに限って考えるのは、あまり現実的ではなかったのだ。なぜなら、「位置情報サービスを始めるときから、GPSサービスが始まるというのが前提にあって、それに向かっていまどうするか、と準備を進めていった」(企画開発室・大谷宏)

●ピンポイント

 こうした動きと相前後して、00年10月1日、KDD、DDI、IDOの3社が正式に合併、KDDIが誕生した。

 それにともない、企画開発室も公式組織となり、KDDI内に設置された「au商品企画部」のなかの「インターネットグループ」と名称を変えた。

 インターネットグループは、サービス利用状況の調査にも着手していた。

 まずユーザーの具体的な利用例を集めた。例えば目的地までの経路を計算するサービスをユーザーがどう使っているか、などを調べた。

 KDDIに置かれ、利用者とサービス提供会社の間でデータのやりとりを中継するサーバー「ロケーション・サーバー」を見張っているのだ。このサーバーでは、現在位置のほか、「どれぐらいの誤差か」、「GPSとやりとりできているか」といった情報が付加され、サービス提供会社に送られる。

 新しいGPSサービスでの提供番組をどうするか戦略を考え、その具体的方針から、提供会社に送信する付加情報の項目をどうするか詳細な仕様を決めていく方法をとった。

 大谷は、こう考えていた。

 「天気予報だったら、ある程度の地域がわかればいい。だから、緯度・経度情報だけでも十分。ただ、東京・渋谷のデパートのバーゲン情報をやろうとしているなら、ピンポイントじゃなければならない」 (文中敬称略)(平岡忠紀●文)
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