大航海時代

<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第22話 学生ベンチャーのコンテスト

2002/02/25 16:18

水野博之 高知工科大学 副学長

 最近ある学生ベンチャーのコンテストの委員長を務めて痛感したことを書いておく。そのコンテストは、今回で3回目を迎えた。

 ことわざにも「石の上にも3年」と言うが、このコンテストも3年目にして驚くべき変化が起きた。第1回目は100件あまり、なかには面白いものもあったが、その多くはアイデア的なものが多く、アイデアコンテストの感があった。

 2年目には500件という大変な数の応募があってビックリ仰天したが、「1回目と変わった」という印象はなかった。

 3回目になって、まったく内容が一変した。それは、よく例にひくのだが、水が100℃で一挙に気体に変わるような質的な変化であった。いわば革命的な変質といってよい。突如として全体の内容が劇的に向上したのである。

 内容の向上とともに、応募者の行動にも劇的な変化が起こった。自らが発案したサンプルを堂々と会場に持参し、デモンストレーションをする人たちまで現れ出したのである。それも1人や2人ではない。ようするに若人たちが動き出したのである。

 いろいろ意見を聞いてみると、どうもこの1年間の世の中の変化を反映したものであるようだ。よもや、と思っていた大企業が軒並み人員整理に走り出し、このままでは自動車産業と言えども時間の問題ではないか、という危機感が若人たちに急激な意識の変化を生んだようである。

 こう考えてくると、過去10年間の沈滞の成果はまさにこのような若者の意識を育てた、ということになるのかもしれない。これら若い人たちはもう「寄らば大樹」なんて考えはこれっぽっちもないようで、自らのものを世に問おうとしている。大樹幻想のなかで自らの人生を生きてきた親たちは「あれよ、あれよ」と驚くばかりである。日本にも希望が出てきた。(宝塚劇場にて)
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