実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>3.目論見書を読む(1)

2002/03/18 16:18

 一般に株式や債券などのことを有価証券と呼ぶ。新規公開株も同様で、この有価証券への投資に際しては、投資家が知ることのできる情報に格差があってはいけないというルールがある。

 投資機会の平等や公正さの観点で、一部の投資家だけが知りうるような材料(情報)があってはいけない。新規公開企業は、各市場で上場承認を受けた途端、上場(IPO)するまでの間、メディアの取材などを極端に制限される。特定の媒体やメディアでだけ、うっかり今後の事業戦略や見通しに関するインタビューが紹介されたのでは投資家に対する機会の平等や公正を欠くことになるためだ。

 投資家が同じ時期に同じ内容で共有できる情報が目論見書で、新規公開株の公募株式を買えた投資家には配布が義務づけられている。目論見書とは企業情報に関する統一的な「情報マニュアル」のようなものだが、証券用語だけではなく、企業会計にともなう幅広い金融用語が多用されるため、馴染みのない人にはさっぱり理解できないというケースも多い。複雑な事業内容の企業であれば、企業そのものを理解することさえ骨の折れる作業になる。しかも、100ページ前後にもなる分厚い冊子で、「まともに読んでいる投資家はいない」とさえ言われるほどだ。

 とはいっても、投資する際の情報は必要であり、現行ルールのなかで出されている唯一の情報源である以上、読むポイントを押さえることが重要になる。目論見書の正式な名称は「新株式発行並びに株式売出届出目論見書」で、大まかな内容は次のようなものになる。新規公開にともなう公募・売出株の情報、スケジュール、主幹事、幹事証券、資金調達にともなう企業の手取金の使途などが説明される「証券情報」。企業の詳細な事業内容や沿革、関係会社情報、事業のもつ競合やリスク情報、設備、役員、業績情報などの「企業情報」。既存株主や第三者割り当て増資にともなう資本移動などの「株式公開情報」となる。このうち、実際に株価決定プロセスに関する重要なプライシング(価格)情報は、目論見書が発行されたあとから決定するため、通称、訂正目論見書という形で2回、内容変更が行われる。投資判断の材料として最も重要な情報のひとつが訂正目論見書に盛り込まれている。

 IPO投資を行う上でまず必要な情報が上場スケジュール。新規承認から上場までは約1か月間と短い。情報入手、投資判断、申し込みなどを考慮すると、できるだけ早めに情報を把握しなければ、仮条件提示(ブックビルディング)期間、条件(公募価格)決定日という重要な日に投資の可否判断を誤ってしまう。
  • 1