WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第100回 デルのサービス事業

2002/04/08 16:04

週刊BCN 2002年04月08日vol.936掲載

 01年、世界で縮小したパソコン市場で出荷台数を前年比18%も伸ばし、トップシェアとなったデルコンピュータは、ハード拡販に加えてITサービスも05年に100億ドル(1兆3000億円)に伸ばす構想を発表した。02年1月決算で同社売上高は319億ドルで、サービスは30億ドルであった。これを4年間で3倍以上伸ばすのが同社のマイケル・デル会長の構想だ。同社のこれまでのITサービスはハード保守契約に基づく保守サービスが約60%で、ソリューション開発などはまだわずかである。デル会長はサービスを大きく伸ばすために、これを自社要員を増やして実現する方法は採らない。デルのITサービス拡大は、あくまでIBMやEDS、アクセンチュア、ユニシスなど大手ITサービス事業者と、全世界で5000社を越える中小サービス事業者の提携をその基盤とする。

100億ドルに拡大

 従ってデルの保守サービス、システム開発、システムインテグレーションなどで顧客サイトに出向く要員の大部分は、提携先企業社員となる。デル日本法人は既に年間5万台以上のインテルサーバーを国内で販売するが、デルのサービス部門「デル・テクノロジー・コンサルティング」の要員は03年でも100人未満だと、同法人の浜田宏社長は語る。デルはハード販売では直販指向を貫くが、ITサービスではサードパーティ全面依存という他社とは全く異なる手法を使う。デルの粗利益率は既に18%を下回り、また売上高販管費率も9%を下回る「アンダー9」を実現した。02年1月未決算時の在庫有高は僅か3.3日分だ。この他社の半分程度の低い販管費率によって、デルは価格破壊を自ら率先して実行して出荷台数を独り大きく伸ばし、競合他社を引き離す。従ってデルは、ITサービス拡大のため自社要員を大幅に増やし販管費率を上昇させることは、デルの得意とするビジネスモデルを破壊すると考えている。

 このため自社要員でなくサードパーティに依存するITサービス拡大という戦略を選択したと考えられる。デルのハード販売台数は多いので、デルとサービスで提携するSIerのメリットはきわめて大きい。大どころでは、デルはIBMサービス部門に大きく頼る。このためデルはIBMと7年間に60億ドル(7800億円)という巨額ITサービスをアウトソーシングする契約を結んだ。ハード売上構成がきわめて小さいユニシスなどは、デルに都合の良いサービス提携先だ。ITサービス専業EDSもデルとの親和性は高い。

 デルはハードでの競合の少ないメーカーのサービス部門も積極的に活用する方針だ。とくにわが国ではハード売上構成比の小さい大手SIerはきわめて多い。これまでデルのユーザーは中小企業が主体であったが、同社のハイエンド・インテルサーバーや、EMC製大型ストレージをデルは大企業に積極的に販売し始めた。こうなるとエンタープライズ主体のわが国大手SIerもデルとの協業メリットがどんどん大きくなり、同社ハードのシェアがこれで急上昇する可能性もきわめて高くなる。(中野英嗣●文)

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