インダストリーネットワーク(大橋俊夫社長)は、下請けメーカーを支援するeプラットフォーム「諏訪バーチャル工業団地」(http://www.svip.ne.jp/)で、長野県諏訪市を中心に地域の活性化に尽力している。同サイトには約150人の下請けメーカー経営者や大学の研究機関関係者などが参加し、メーリングリストで情報共有を図りながら、新製品の開発を展開。最近では開発した新製品が米大手企業に採用されたケースもある。「諏訪バーチャル工業団地」は、下請けメーカーの新しいあり方を探る場として注目を集めている。

96年にサイト開設するも当初は受注の手応えなし

 インダストリーネットワークの大橋社長は、「諏訪地域は、戦後から工業集積地として世界的にも高い競争力を生み出し続けてきた。だが、1985年頃から徐々に競争力を失ってきている。そのため、モノ作りの仕組みを変えていかなければならない」と話す。

 大橋氏はインダストリーネットワークの社長である一方、家業である機械工具販売商社「オオハシ」の専務でもある。

 「下請けメーカーは、大手企業からの発注さえ請け負っていれば仕事があった。だが、大手企業が大量生産をアジア地域にシフトしたことで受注が減少した」

 下請けメーカーを支援するeプラットフォーム「諏訪バーチャル工業団地」の立ち上げは、大橋社長自身が下請けメーカーの厳しい状況を経験してきたことが背景にある。
 サイト立ち上げのプロジェクトは94年に遡る。「製造業の活性化のために自らが行動する必要があった。そこで製造業に携る若者を中心に20数人で『諏訪湖電走会』を結成した」のが発端だ。

 「諏訪湖電送会」は、長野県の製造業者が得意とするモーターや高性能磁石、アクチュエーターなどをアピールするために、電気自動車を開発することで地域の活性化につなげる活動を開始した。一方、モノ作りにインターネットやネットワークが欠かせないものになると予測し、「諏訪湖電送会」内に地元製造業の共同受注を目的とした「インダストリーウェブ研究会」を95年6月に発足した。

 「この研究会では、CD-ROMの企業ガイドをサイトにのせることでCALS対応につなげ、世界各地の企業から受注を獲得することを目指した」と当時を振り返る。

 95年当時はインターネット自体に馴染みが薄かったこともあり、製造業の経営者を対象とした勉強会も開催した。こうした活動や取り組みを経て、「諏訪バーチャル工業団地」は96年12月に開設することとなった。同サイトには、地元企業10社が賛同した。

 だが、サイトを立ち上げた当初は、全くといっていいほど仕事につながる受注がこなかったという。そのため、97年からは会員企業同士が個々の技術や経営などの情報を議論・提供できる場として、メーリングリストを開設した。最近では「こんな部品を探している」、「こういうものを作りたい」といった仕事関係の情報、勉強会・講演会・助成金の情報、新しいビジネスにつながる情報のやり取りが活発化している。メーリングリストの会員数は、開設当初35人だったが、今では中小メーカーの経営者や大学の研究機関関係者などを含め約150人にまで増えている。

 大橋社長は、「サイトで単に企業を紹介するだけでは意味がない。『何ができるのか』という各企業のアイデンティティを見つめ直すことが重要だと実感した」と強調する。

 メーリングリストが功を奏し、「諏訪バーチャル工業団地」では、参加企業が開発したストレージやUSBコントローラなどを米大手企業が採用したケースも出てきている。1社単独では開発できない製品でも、参加企業が知恵を出し合い、新技術を創出することが受注につながる。

 大橋社長は、「以前の製造業はほかの企業ができることを行えば十分だった。だが、現在では新しい技術やサービスを提供しなければ通用しない。付加価値の創造には、ネット上のプラットフォームと、地域や業界のなかにある既存のプラットフォームの融合が必要だろう」と分析。「諏訪バーチャル工業団地」でほかの企業に競争力で負けないコア技術をもつことを訴求していくという。

 「1社だけで世界に通用する技術を開発することは、ますます難しくなる。外部の技術を取り入れることが新しい『モノ作りのあり方』だ」としており、「大手企業は、中小企業を下請けとしてみるのでなく、パートナーとしてみることが日本技術の成長につながる」と指摘する。

 諏訪地域では、「諏訪バーチャル工業団地」を皮切りに、行政の協力によるイベントの開催や近郊工業地域との協力関係の推進など、各種の取り組みが盛んだ。98年には、「諏訪バーチャル工業団地」の参加企業を中心にした諏訪地域の「インターネット受発注実証実験プロジェクト98」を、当時の通産省がコーディネート支援事業に認定した。加えて99年には、「インターネット高度利用研究会プロジェクト99」も採用されており、ネットでモノ作りを行う実験を試みている。

 01年1月には諏訪湖周辺の産業地域から、伊那、駒ヶ根、飯田周辺、甲府、東京(多摩など)までの工業集積地域と連携し、情報やビジョンを共有する新しい産業集積地域を構築する「ドラゴンバレー構想」が浮上した。

 大橋社長は、「この構想は、現段階で情報インフラとコンテンツが揃いつつあるが、それらを使ったプラットフォームが遅れている。新しい価値のイノベーションを地域ごとに作り出す仕組みを整え、産業プラットフォームの構築やビジョン作りを訴求していく」と意気込む。

COMPANY DATA
インダストリーネットワーク

 2000年4月13日に設立。資本金は1250万円、従業員は5人。
 コンピュータシステムやソフトウェアの企画、情報処理・情報提供サービス、経営コンサルティングなどを主な事業目的とする。また、下請けメーカー向けのeプラットフォーム「諏訪バーチャル工業団地」の運営を担当する。
 「諏訪湖電送会」のなかから発足した「インダストリーウェブ研究会」が前身。諏訪地域の産業プラットフォームの実現に向けて会社組織となった。
 大橋社長は、94年から行っている「下請けメーカーのあり方」に対する取り組み・活動を通じて、新技術やサービスの創造を訴求している。「諏訪の工業集積地だからできること」をコンセプトに、諏訪地域を中心とした産業プラットフォームの構築を目指す。