WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第117回 熾烈なシェア争い

2002/08/12 16:04

週刊BCN 2002年08月12日vol.953掲載

 02年以降、ウェブシステムの構築需要が大きくなるにつれ、この基幹ソフトのアプリケーションサーバー(AppSvr)のシェア争いが熾烈となった。このソフトは、ネット上のホームページを表示するだけでなく、企業のさまざまな業務をウェブブラウザの画面上で処理できるようなソフトだ。ウェブを企業システムやEC用プラットフォームにするための機能として、各ソフトベンダーはAppSvr機能強化にしのぎを削っている。

アプリケーション・サーバー

 01年の当ソフト世界シェアはBEA24.8%、IBM23.0%、オラクル12.1%、サン7.9%となっている。このAppSvr機能強化に焦点を合わせるのはサンだ。サンはSolaris9 OE(オペレーティングエンバイアロンメント)にAppSvrを包含し、IBMのウェブ関連ソフト戦略に真正面から競合しようとしている。コンパックを買収したHPは、自社AppSvrを放棄してトップのBEA WebLogicを利用するためわが国を含めて全世界でBEAと提携した。

 各AppSvrベンダーはシェアで上位2社に入れなければ、次世代のeビジネスであるXMLベースのウェブサービス構築競合で生き残れないと考えている。マイクロソフト以外のAppSvrベンダーはいずれもJavaでウェブサービスのアプリケーションを開発するためJ2EE関連機能強化を競っている。IDCアナリスト、ミッチェル・ローゼン氏はAppSvr市場動向について次のように分析する。

 「01年にAppSvrベンダーはJava市場での自社プレゼンスを明確にした。さらに02年にはJava2エンタープライズエディションによるウェブシステム構築実績の勝敗が明確になる。この競合に勝ち抜くためAppSvr機能強化の競合が激しくなった」AppSvr市場で無気味な存在はマイクロソフトだ。同社はAppSvrシェア争いにも顔を出さず、BEA、IBM、オラクル、サンの競合を静観しているように見える。

 しかし実際には、マイクロソフトは既にAppSvr戦争に参戦しているのだ。ウェブシステム構築を考えると、ウィンドウズ2000はディレクトリサービスを組み込んだAppSvrである。さらに02年後半にウィンドウズ.NETをリリースすれば、AppSvrとして機能はより一層強化される。即ちマイクロソフトはシェア争いに顔を出さないAppSvr市場のキープレーヤーであることを忘れてはならない。

 ウェブアプリケーション開発に力を入れる米企業ユーザーには、この関連ソフト購入で1つの傾向がはっきり現れ始めた。それは、このソフト群を別々のベンダーから購入するマルチベンダー方式を停止して、1ベンダーから、AppSvr、ポータルサーバー、インテグレーションソフトを含む完全なソフトウェアプラットフォーム全体を購入するという方式へ切り替えていることだ。結果として、ウェブ構築実績の高いベンダーのAppSvrが市場を支配しつつある。(中野英嗣●文)

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