中小企業のIT化を考えるうえで、期待したいのがITコーディネータ(ITC)の存在である。中小企業のIT化と経営改善を橋渡しする目的で創設された資格制度で、この1年ですでに2400人強の有資格者(ITC候補生含む)が誕生している。ベンダー関係者から税理士、経営コンサルタント、独立事業者まで、幅広い分野の人材を集めている。

 確かに、ITC(制度)については毀誉褒貶がある。「ITCの看板でどれだけの商売ができるのか。特に中小企業にはほとんど認知されていない」(システム会社社長)、「ハードルが低いので、ITの知識やスキルにバラつきがあり過ぎる」(ソフト会社関係者)など、業界内では否定的な見方が多い。

 実際、ITC協会関係者に話を聞いても、「現実問題として、中小企業だけを相手にしていてはビジネスが成り立たない。意識して狙うのは堅実な中堅企業になる」と素直に認める。

 ただ、筆者は何もITCにボランティア活動を期待しているわけではないし、ITに関して全知全能の調整役だとも思っていない。ITCに期待しているのは、その人的ネットワークなのである。

 ITCが「経営とITがわかる調整役」だとしても、1人がカバーできる範囲は限られる。だが、それが3人集まり4人集まり、それぞれが専門分野で強みを寄せ合えばどうなるのか。

 例えば、流通業の在庫管理システムを構築する場合。データベース技術に詳しいITC(ベンダー関係者)と、業務設計ができるITC(経営コンサルタント)、財務面から改善提案できるITC(公認会計士)が集まれば、それは大きな力になる。

 これは何も理想論を語っているわけではない。「顧客へ新しい提案をするのに、経営コンサル業のITCに力を借りたところ、自分にはない発想や提案があり、顧客も喜んでいた」(東京都内のITC候補生)。すでに、ITCの人的ネットワークを活用する動きが始まっている。

 ITC協会関係者も、「ITC同士はメールなどを通じて密に連絡を取り合っており、眼に見えないところで様々な協業が生まれている」と話す。この柔軟で幅広い人的ネットワークが、中小のIT化に欠かせない支援基盤になりそうな気がする。(坂口正憲)