e-まっぷで住民参加型行政を(浦安市)


 行政に地図は欠かせない。道路や河川の整備、水道・下水道などライフラインの整備、都市計画や防災計画の策定、固定資産税の徴収業務などあらゆる業務に地図は必要となる。電子自治体にとって重要な基幹システムとなるGIS(地理情報システム)の導入が本格化してきた。先進的な取り組みで注目される千葉県浦安市と三重県の事例を2回に分けて報告する。

 東京ディズニーランドで全国的に有名な浦安市は、人口約13万9000人、面積は半径約2kmに入る小さな都市だ。東京湾に面した地域にはマンションが多く建設され、最寄り駅のJR新浦安駅は、放置自転車で全国ワースト2という不名誉な評価も得ている。浦安市では2000年度から統合型GISの構築を事業化してきた。

 統合型GISで最初の難関が、各部門で作成してきた地図を統合化して電子化する作業だ。各自治体とも調整作業で苦労しているケースが多いが、浦安市は統合型GISを担当する情報政策課が中心となって00年度には共用空間データベース「e-まっぷ」を構築した。市道の道路縁、歩道、分離帯など情報は、最も正確なデータをもつ道路管理課から提供を受け、その他の国県道、河川、鉄道などの情報は都市計画課から提供して統合した。地番や建物など固定資産課が保有しているデータは、法律で課税目的以外の使用が禁止されているため、それまで固定資産課で行っていた地図作成業務を情報政策課で実施。そのデータを反映した「e-まっぷ」を固定資産課でも使用するという手法で問題をクリアした。

 「これまで固定資産課の地図は、位置座標も正確ではなかったが、共用空間データベースの構築によって正確な地図に一本化することができた」(経営企画部情報政策課電子自治体推進室・醍醐恵二氏)。次の課題は、「e-まっぷ」をどのように活用するか。市役所内部で電子地図を統合化する以外、いろいろな利用方法が考えられ、01年度は多目的利用の実験に力を入れた。その試みのひとつが、教育現場での利用である。ある中学校では、新浦安駅周辺の放置自転車の実態調査に「e-まっぷ」を活用した。「市としても整備する予定だった場所に、中学生も駐輪場を設置するプランを提案。駅近くのスーパーの屋上を駐輪場に使わせてもらうといったアイデアもあった」という。

 別の中学校では、PTAも協力してバリアフリーマップを作成した。地図上に改善が必要な地点を書き込み、付近のデジタル写真も添付。行政にとっても参考になる情報が盛り込まれていた。「子どもたちがまちづくりに興味をもつ。IT化ではすぐに効率化だとか、経費削減といったことばかりが注目されるが、そうした意識の変化がe-まっぷをつくった一番の効果ではないか」浦安市では、「e-まっぷ」をコミュニケーションツールとして積極的に活用していくことにし、今年度から一般公開をスタートした。

 今年8月には、新しい都市計画のマスタープラン(案)をインターネットで公開し、意見募集も行った。現在は、「e-まっぷ」に行政側がさまざまな情報を載せて提供する「掲示板」機能と、住民側が「e-まっぷ」上に情報を書き込んで行政側に送付する「メール」機能が利用できる。さらに浦安市では、行政と市民の間の情報交換だけでなく、市民同士のコミュニケーションを行う「e-まっぷ・ひろば」の構築も計画している。これまで実験を踏まえて今年度中にシステムが完成する見通しだが、運用はNPO(非営利団体)などの民間に委託する考えで、サービス開始時期はまだ検討中。「プライバシー保護の問題も含めて運用方法をしっかり詰めてからスタートする」考えだ。(千葉利宏)