e-Japan最前線

<e-Japan最前線>14.大阪府のIPv6データセンター

2002/10/07 16:18

週刊BCN 2002年10月07日vol.960掲載

 大阪府は、先月19日、地域IT拠点施設整備事業の企画提案コンペ(競技)の結果を公表した。NTTデータ・新日鐵・NTT西日本・大阪ガス・ネットワンシステムズ企業連合(以下、NTTデータ連合)が、事業予定者に決定。

地域ITの拠点へ

 大阪府は、先月19日、地域IT拠点施設整備事業の企画提案コンペ(競技)の結果を公表した。NTTデータ・新日鐵・NTT西日本・大阪ガス・ネットワンシステムズ企業連合(以下、NTTデータ連合)が、事業予定者に決定。いよいよ、地方自治体では初のIPv6データセンターの構築が来年4月の稼動をめざしてスタートすることになった。IPv6は、次世代のインターネット技術として普及を進めていく必要性が指摘されている。政府のe-Japan戦略でも「IPv6を備えたインターネット網への移行を促進する」ことが明記されている。

 技術的には実用段階に入りつつあるものの、IPv6に対応したサービスやコンテンツを提供する基盤の整備が遅れているのが実情だ。今年2月、総務省は01年度第2次補正予算で地域IT拠点施設の整備に対する貸付事業を創設し、事業募集を開始。3月に対象事業として大阪府を決定し、事業費45億円に対して15億円の無利子貸付金の融資が決定していた。「IPv6対応の機器の開発も進んでいると聞くが、なかなか実用になっていない。大阪府として電子自治体を推進していくうえで、新しい技術にも前向きに対応していく必要がある」(企画調整室科学・情報課・浅野幸治課長)。

 結果的に総務省の貸付事業も大阪府だけが採択されることになり、大阪府が電子自治体のIPv6対応で全国の中核的な役割を担うことになったのである。大阪府では、有識者や専門家百数十人による「先進的iDC(インターネットデータセンター)研究会」(事務局:(財)関西情報・産業活性化センター)を開催し、IPv6データセンター構築に向けた要件の抽出を行った。7月に公表された報告書では、先進的iDCの役割を次の7点にまとめた。

 (1)先進性の保有(テストベット機能、エスクロー=第3者預託サービス)、(2)公共iDCとしての性格(中立性、オープンな利用環境など)、(3)電子自治体実現を支援する機能(LGWANへの接続、自治体向け広域アプリケーションサービスの提供)、(4)社会・地域的な視野で中核的な機能(バックアップ機能など)、(5)高度なファシリティとセキュリティの提供(SLA=サービスレベルアグリーメントの整備など)、(6)地域のデータセンターの連携拠点(広域行政サービスの推進など)、(7)中核的データセンターとして担うべき機能の実現(認証、公証、決済機能の提供)

 大阪府のiDCは、実にさまざまな役割を担うことになる。一義的には、大阪府が推進する電子自治体サービスを24時間体制で提供するデータセンターだが、大阪という地理的な条件を考慮すると「エスクローサービスや、東京に集中している機能のバックアップの役割も重要になる」(浅野課長)。さらに、IPv6の普及によって成長が期待されている情報家電分野での実証実験など民間企業にも活用してもらう考えだ。

 「今回の企画提案コンペでは、今年度に東京都三鷹市で実証実験が行われるマルチペイメントネットワークを使った電子決済サービスを、大阪府のデータセンターでも行うといった提案も盛り込まれていた」事業予定者に決まったNTTデータ連合の提案は、運用や事業収支などの計画が具体的であったことが評価されたようだ。今後は引き続き、データセンターに設置するサーバーなど機器類に関する入札と、データセンターの運営を委託する民間会社の公募を行う予定だ。来年4月には府民向けサービスを順次スタートさせるほか、「IPv6関連の実験を広く自治体や民間企業に呼びかけて実施したい」と意気込んでいる。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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