市町村が電子自治体の実現をめざすうえで大きな阻害要因となっているのは、国が同時並行で進めている市町村合併促進策だ。合併前にIT化投資を行えば、システム統合の手間や二重投資といった無駄が発生するのは避けられない。

静岡市と清水市の場合

 国の合併促進策は、2005年3月までに合併した市町村を対象に合併特例法で10年間の特例債起債を認め、その返済を国が財政支援するもの。全国約3200の市町村を一気に約1000に集約する目標を掲げているが、この合併期限の05年はe-Japan戦略でも「世界最高水準のIT国家をめざす」と定めている年と同じである。

 静岡県静岡市と清水市。03年4月1日の合併で新生「静岡市」が誕生するまで残り170日を切り、準備作業は急ピッチで進んでいる。両市が正式に合併協定書を締結したのは今年4月2日のこと。ちょうど、みずほ銀行が発足した翌日のことである。「実は、当初、メインコンピュータシステムは、静岡市に一元化するということに決まっていたが、清水市から、みずほ銀行と同じように、静岡市と清水市それぞれのホストコンピュータをブリッジする方式の採用提案が後から出され、協議検討を行っていた。結論が出ない状況にあったところに、みずほ問題が起きた」(静岡市総務部情報政策課・森健課長)。まさに絶妙のタイミングである。

 静岡市のホストシステムには住民情報システム、財務会計システム、人事管理システムが搭載されており、富士通製コンピュータを使ってNTTデータが構築、一方の清水市はNEC製だ。合併により人口約70万人、政令指定都市への移行も視野に入っている大都市のホストがブリッジ方式では、「やはりリスクが高い」という結論になったのも仕方がないところだろう。「どちらか一方にシステムを一本化した方が効率的」との判断から、メインとなる住民情報システムについて静岡市と清水市でそれぞれに移行費用を概算。費用面でも有利な静岡市のシステムへ統合する案が今年6月に最終決定した。

 今月からは、清水市の住民データを静岡市のシステムへ移行する作業がスタートしており、11月いっぱいにはシステム開発を終了して試験運用をスタートする予定だ。みずほ問題の教訓から試験期間も十分に確保して、来年4月の本格運用に備える。新生・静岡市では05年4月には政令指定都市への移行も控えている。その場合のシステムはどうするのか。「せっかく一元化したものをまた分散化するのでは費用がかかる。人口70万人というと、ほかの中核都市と規模も大きく違うわけではないので、今のシステムを基本に検討していくことになるだろう」(森課長)。

 静岡市と清水市では、システム統合作業のほかに、合併時に一元化しておく必要のある863件の事務事業についてアクションプログラムを策定し、担当課でのすりあわせ作業を進めている。しかし、静岡市では合併協定書締結直前の今年3月に、電子自治体を推進するための基本計画「静岡市情報化推進計画―情報ノチカラ 新たな市民社会の構築に向けて」を策定。これをベースに来年1月をメドにアクションプランの策定作業も進めているところだ。「アクションプランは合併後をにらんで策定しているもので、合併後に順次、具体化していきたい」(森課長)――。市町村での電子自治体は、やはり合併問題をまず解決することが不可欠だと言えそうだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)