この連載も残り2か月となってきた。今後はITベンダーや流通チャネルの動向を通して、中小企業のITマーケットを考えてゆきたい。最初に取り上げたいのは、複写機メーカーである。

 ビジネスを営む企業で、複写機と縁のないところは少ないはずだ。電話と並んで必須のオフィス機器となっている。その意味では、複写機メーカーは幅広い中小企業と接触できる。

 例えばリコーは、中小企業を中心に100万社との間に掛売り口座をもつ。公共料金系を除けば、国内でこれだけの取引口座を運用している企業はない。

 それだけ取引先へ販売を仕掛ける営業体制、保守サービス体制、そして何より与信を管理し、債券を回収する仕組みが整っている。一般のITベンダーが同じ仕組みを整えるのは不可能に近い。

 その点で、複写機メーカーは中小企業のITマーケットでキープレーヤーになる可能性を秘めている。複写機メーカー自身も機械の箱売りから、ネットワークを絡めたソリューション営業へのシフトを図っている。

 実際、リコーは不況下でも好調な業績を維持し、勝ち組企業に数えられる。目立ちはしないが、中小企業のITニーズをこまめにフォローしているからだろう。

 そして、リコーと並ぶ複写機メーカーの雄、富士ゼロックスも中小企業のITマーケットへの接触を強化し出した。

 10月に発表したインターネット環境提供サービス「Beat」がその販売戦略を具現化したものだ。

 月額2万円弱の料金で、独自のセキュリティ機能を装備したインターネットサーバーや、その運用管理を全面的に提供する。オプションで広帯域回線導入も支援する。

 確かに、この種のサービスは決して珍しいものではなく、過去にも挑戦して失敗したケースが少なくない。だが、前述した通り複写機メーカーは膨大な顧客ベースと販売基盤がある。

 例えば、「Beat」導入を検討するある税理士事務所は、「複写機のリプレースの際、電子申告に備えたインターネット導入をゼロックスの営業マンに相談したところ、Beatの提案を受けた」と話す。

 複写機という絶対的な商材で顧客ベースを持つ複写機メーカーの力は侮れない。