モデル事例にみる IT投資減税活用ガイド

<モデル事例にみる IT投資減税活用ガイド>第5回 CTIシステムで考える「計算単位」の問題

2003/05/12 16:18

週刊BCN 2003年05月12日vol.989掲載

 今回は、小規模なCTI(コンピュータテレフォニーインテグレーション)システムを例にとり、システムを管理する単位と減税の関係を説明する。(日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA) 税務委員会委員長 税理士 根岸邦彦(監修))

 IT資産は、企業会計ならびに商法では固定資産とされ、税法では減価償却資産と呼ばれる。ハードウェアは工場で使用するものは「機械及び装置」、企業の情報管理や事務処理に使用するものは「工具、器具及び備品」に区分される。ソフトウェアは無形固定資産となる。

 今回焦点を当てる計算単位とは、IT資産をどのようなまとまりごとに帳簿に記載し、会計処理をするかという単位のことである。

 CTIシステムは、PBX(構内交換機)とパソコン、サーバーを接続し、電話の送受信をコンピュータで管理するシステムのことである。たとえば、宅配ピザ店に設置されたCTIシステムでは、顧客の注文電話の発信番号をキーとして、顧客の名前や所在地の地図、メニューをオペレータの画面に表示して、注文の受付や配達管理を補助する。また、顧客の注文履歴を記録して、顧客へのサービスや営業展開の分析なども行う。

 ハードウェアはサーバーとパソコン、周辺機器、PBXである。ソフトウェアは先に述べたCTIシステムに必要な機能を備えたパッケージソフトを購入する。では、帳簿に記載する計算単位をどのように定め、会計処理をすればよいのか。

 まず、「取得の日」と「事業の用に供した日」を定める。取得の日は、ハードウェア、ソフトウェアともに引き渡しを受けた日であり、利用開始した日が「事業の用に供した日」となる。会計上は取得の日を帳簿に計上し、事業の用に供した日から減価償却を計算する(通常は同じ日付でよい)。

 次に、勘定科目(減価償却資産の区分に対応する)にこれを分けて、耐用年数の異なるごとにまとめる。サーバーとパソコンは耐用年数が異なるので、別々に計上する。5台のパソコンは耐用年数が同じなので一緒に計上する。耐用年数は、電子計算機ではパソコンが4年、その他が5年、周辺機器は5年、ネットワーク機器は10年である。そして、それぞれに「取得費用+付随費用」を計算して「取得価額」を定める。今回の場合は、法人税法施行令第54条により、設置調整料が付随費用にあたるので、これを価格によって比例配分するなどして付加する。

 一方のソフトウェアは、無形固定資産の区分の「ソフトウェア」の科目で別々に計上する。これらすべてをCTIシステム以外の用途に使わないのであれば、耐用年数が同じであるので、「CTIシステム」として一括計上してもよい。

 以上のように、すべて減価償却資産として資産計上すれば、IT投資減税の対象となる。しかし、通常はパソコンは損金としたい場合が多いと思われるので、次回、「1単位」と「同時設置」の問題を合わせて説明していき、その場合を解説していく。
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