今回のIT投資減税の問題点の1つに、「対象となる資産の範囲が常識でわかりにくい」点がある。ハードウェアについていえば、「電子計算機」が主体になっており、ソフトウェアも、その定義を読むだけでは、その範囲がわかりにくい表現になっている。(日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA) 税務委員会委員長 税理士 根岸邦彦(監修))

 今回はソフトウェアの定義を解説し、インターネットで広く利用されている「HTML文書」は減税対象に入るのか、を検討していこう。

 ソフトウェアとは、「プログラム+文書」であるというのが、法律上の定義である。ここでプログラムとは、「電子計算機を機能させて結果を得ることができるように、これに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(著作権法第2条)となっている。

 また、日本の国税庁にあたる米内国歳入庁(IRS)の定義で、ソフトウェアとは「コンピュータに所定の処理を行わせるプログラムまたはルーチンならびに、これらの記述や保守に必要な文書」となっている。

 ここで、「あれ」はどうなのか、と気になる部分がある。1997年に出た「ホームページはソフトウェアではない」という通知である。97年7月28日、国税庁はインターネット上のホームページ制作を他の者に委託した場合に生ずる費用について、税務上の取り扱い方を明らかにした。

 その内容を簡単に説明すると、次のことが挙げられる。(1)ホームページはHTML言語で書かれているものでありプログラムではない、(2)利用期間が1年以内の場合は、損金扱いとして取り扱う、(3)1年を超えて使用するものは繰延資産となる、(4)データベースにアクセスするものや、ネットワークと接続するためにプログラムを使用する必要がある「高度なホームページ」はソフトウェアである??というものであった。

 この通知が出された97年と現在では、インターネットのウェブサイトの実状が大きく異なっている。現在のウェブサイトは、ユーザーインターフェイス部分(HTMLを利用者のブラウザに表示する部分)、ロジック部分(プログラムによって、HTMLを生成する部分)、データベース部分(会員情報や提供する情報を検索のために格納する部分)の3つで構成され、97年通知の「高度なホームページ」に該当するものが増えている。

 また、実際にHTMLのソースコードを検討すると、現在はほとんどがプログラム記述になっている。したがって、「ソフトウェアではない」ということにならない可能性が高い。

 それでは、プログラム以外のコンテンツの問題はどうであろうか。

 たとえば、eコマースのウェブサイトを外注で作ったとしよう。上記のように、ユーザーインターフェイスとプログラム、データベースとで構成されるソフトウェア部分の費用と、「データ」として登録する商品情報などのコンテンツを制作する費用がかかる。つまり、ソフトウェアにコンテンツの費用と導入費用を加えたものが“常識的な”ウェブサイト構築の取得費である。

 今回の租税特別措置法の規定では、「プログラム+文書」がソフトウェアとみなされ、減税対象はソフトウェアに限られたものであるが、この場合、コンテンツ制作費用はどのように判断すればよいのか。

 2つの解釈がある。(1)減税対象がプログラムに限られるとしても、その取得費としては「コンテンツ制作費用」が付随費用であるとして、無形固定資産の取得価額になるのであるから、減税対象としても全体の費用でよいという考え方、(2)システム全体の中からソフトウェア費用だけを減税対象とするという考え方――である。

 実はいずれが正しいかは、現在は判別が困難である。とにかく、実際には全体として1つの機能を果たしているのであるから、ソフトウェアの言葉の意味について、細かい部分にこだわる必要はないかもしれないが、いずれにせよ、基本通達などにより解釈がはっきりすることを望みたい。