情報モラルとセキュリティ

<情報モラルとセキュリティ>14.コンテンツ流通革命と情報モラル

2003/07/14 16:18

週刊BCN 2003年07月14日vol.998掲載

 この連載の第1回で紹介したデジタル情報保護技術マーク(DIPTマーク)を、ACCSは6月の総会後の記者会見で正式に発表した。8月5日には、ACCS会員でこのマークを制作した委員会のメンバーでもあるイーストラテジーが、自社のセキュリティ技術と三井物産が扱う技術を合わせ、セミナーを開催する。タイトルは「デジタルコンテンツ流通構造革命(コンテンツ保護とセキュリティソリューション)」。ACCSもこのセミナーに協賛し、デジタルコンテンツの侵害事件や法的側面とACCSの活動について講演を予定している。(コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事 久保田裕)

 このセミナーでイーストラテジーが紹介するのは、デジタルコンテンツを2次利用できないようにする技術「コンテンツシールド」である。これは、画像データに対してファイル保存や印刷をできなくさせたり、閲覧データの履歴をとることで情報の流出を防ぐというシステムである。音楽や動画の配信において、ライセンス認証によって不正利用できなくする技術も開発している。これらがデジタルコンテンツそのものの不正コピーを防止する技術である一方、三井物産は、配信経路における盗聴や改ざんを防止する技術を扱う。

 ACCSが推進している情報モラルの確立のためには、法制度の充実と実効性の確保、教育、そして保護技術の3つの観点が必要である。この3点は、法の運用を厳密にしすぎると警察(監視)国家になってしまい、教育によって情報モラルが確立した社会では、法律も保護技術も不要になるというバランスの中にある。そして、警察国家のような暗黒社会にしないためにも、教育と保護技術が必要なのである。

 イーストラテジーが参加して策定したDIPTマークは、情報モラルの確立に向けた保護技術の象徴であり、保護技術を採用したウェブサイトやCD、DVDなどに貼付されることで保護技術の普及と認知の向上を目指す。このマークが貼付されたコンテンツは、技術的に保護されている点で権利者にとって有益であるのはもちろん、コンテンツの利用者にとっても、意図せず不法行為を犯してしまう危険が排除されていることを表すものでもある。

 さらに、技術的に保護されているコンテンツであることを示すことで、そのコンテンツが持つ情報の価値について認識を高められるという効果がある。こうした視点を持って、コンテンツホルダーは保護技術を導入するとともに、このマークの貼付によって自らのコンテンツの価値を高めて欲しい。
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