視点

イラク戦争が残したもの

2003/07/14 16:41

週刊BCN 2003年07月14日vol.998掲載

 いつの間にか戦いが始まり、そして何となく終わってしまったイラク戦争。しばらく経った今も、これからどのようになるか、なかなか見通せないところだ。とは言っても、長い歴史のなかからみれば、始まりとか終わりなんて考えること自体、意味のないことかも知れないが…。

 ある評論家が「アメリカの本質は軍事大国である」と話している。確かに、アメリカの歴史は軍事大国の歴史かもしれない。また、「クリントン時代のIT大国は例外である」とも話していた。確かにあの頃は、アメリカが軍事大国というイメージは薄かった。

 しかし、よく考えてみると、「軍事大国」と「IT大国」は別のものなのだろうか。むしろ、コインのウラ・オモテの関係と言えないだろうか。例えば、インターネットを考えてみても、これこそ軍事大国としてのアメリカが生んだものではなかっただろうか。さらにさかのぼれば、第2次世界大戦でコンピュータ、テレビ、マイクロウェーブが発達し、冷戦時代にNASA(米航空宇宙局)の技術、GPS(全地球測位システム)などが発達した。

 最近の湾岸戦争でウェブサーバーとなれば、今回のイラク戦争も新しい何かを生んでいるに違いない。そして、その成果は間違いなく日本へ、さらに言うならば日本のマーケットへ押し寄せて来ることだろう。そこで、日本はどんなことを考えればよいのか。1つには、今後アメリカから発信されるであろういくつかの新技術、新サービス、新製品にこれまでの過去の「経験」を生かし、早急に手を打つ必要がある。アメリカから、目が離せない。

 そしてもう1つは、新しい次元での対応を考えることではなかろうか。例えば、新型肺炎SARSについて、どう考えるかである。戦争に関わらないわれわれにとってみても、「ウイルス」との戦争、つまり「命を守る戦い」には、巻き込まれてしまっている。この現実は、「命を守る戦い」に参加し、その切実感のなかで、いくつかの新技術、新サービス、新製品を生み出す努力を、われわれIT産業にも求めていると考えるべきではなかろうか。「IT産業がどう関わるのだろう?」という疑問をはさむ人がいないくらい、今やITは、われわれの生活の全分野に組み込まれているわけだから。
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