立派な研究所を持ったり、博士号を持つ社員を抱える大企業ならともかく、中小企業にとって、研究開発や試験研究という活動は縁遠いものと考えられがちである。  ところが、「販売を目的とするソフトウェア」を開発している企業、いわゆるパッケージソフト開発企業にとって、今回の試験研究費の税額控除制度は、意外に関係が深い。(日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会(JPSA) 税務委員会委員長 税理士 根岸邦彦(監修))

 税法でいう「試験研究費」は、企業会計では「研究開発費」と呼ばれ、ほぼ同じ概念とされている。この研究開発費については、「研究開発費等に係わる会計基準」が1998年に制定され、これに基づいてソフトウェアの開発費は「無形固定資産」の区分とされ、税法もこれにならった経緯がある。

 この基準により、ソフトウェアの開発費と研究開発費の関係は次の2点が規定された。

 (1)ソフトウェア制作費のうち、研究開発に該当する部分も研究開発費として費用処理する。(2)市場販売目的のソフトウェアについては、最初に製品化された製品マスターの完成までの費用が研究開発費に該当する。

 (1)はしごく当たり前のことである。「試験研究目的で開発されたソフトウェアの開発費は資産とせず試験研究費とする」という意味である。

 (2)はパッケージソフトウェア企業にとっては非常に大切な規定である。これを税法的に読みかえると、「複写して販売するための原本となるソフトウェア(いわゆるパッケージソフトのマスター)の開発費の一部は試験研究費として税額控除の対象となる」と解釈できるからである。

 税法でこの取り扱いができる根拠は、「法人税法基本通達7-3-15の3」の「次に挙げる費用の額は、ソフトウェアの取得価額に算入しないことができる。(2)の研究開発費の額(自社利用のソフトウェアについては、その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなものに限る)」に基づいている。

 つまり、自社利用のソフトで収益獲得、費用削減にならない場合の研究開発費の額と、市場販売目的のソフトウェア(会計基準の用語)では、研究開発費部分が無形固定資産ではなく、期間費用とすることができると規定されているのである。

 先に述べたように、企業会計の研究開発費と、ソフトウェアに関わる税法の試験研究費は、ほぼ同じ範囲のものであるので、この期間費用とされる部分は、税法の「試験研究費」ともなる。

 「試験研究費減税」は、租税特別措置法の制度であるので、この法人税法のうちの「全部か一部か」が税額控除の対象となると考えれば良い。

 ソフトウェア開発企業は、税額控除適用の可能性が多くあり、一般企業よりもずっと有利な業種なのである。

 たとえば、研究開発のために制作したソフトウェアは、技術の改良、考案、発明に関する試験的なプロジェクトということなので、新規ハードウェア(プリンタ、ネットワークなど)との接続試験のための費用や、新規商品の可能性を検討するためのテスト目的のプロジェクト費用などはこれにあたる。

 さらに、パッケージソフトウェア開発費の研究開発費部分も試験研究費の対象になる。

 より具体的に、パッケージソフトの開発費のうち、どの範囲が減税の対象となるかを次回解説することにする。