視点

行政の効率化

2003/09/15 16:41

週刊BCN 2003年09月15日vol.1006掲載

 8月25日から住民基本台帳ネットワークシステムが本格稼働を始めた。引っ越しの手続きは転入時1回で済むようになり、全国どこでも住民票の写しが取れるようになった。また、希望者に対して住民基本台帳カードの発行が始まった。この住民基本台帳カードにはICチップが搭載されており、住基ネット用の本人確認用情報が格納されているのだが、他の用途に利用可能な十分な記憶容量をもっている。

 実際に、住民票の写しの交付や転入転出手続きの本人確認に利用するだけでなく、公的個人認証サービスのためのカードとしても利用することになっているし、一部の地方自治体では、各種申請書の自動作成サービスや公共施設の空き照会・予約サービス、公共図書館の利用者カードとしての利用を開始したところもある。しかし、このカードの利用方法としてはまだもの足らない。インターネット上での本人確認用の電子署名カード、病院の診察券、商店街でのポイントカード、公共交通機関の乗車カード、地域電子マネー用のカードとしても利用できるし、実際にいくつかの地域ではこうした利用に向けて実証実験が行われてきている。

 カードに蓄積された情報の漏洩や不正利用を心配する声もあるが、カードに蓄積された情報は、そのサービスごとに独立した場所に記録されており、第三者によって個人情報が不正に読み出されることがないように保護されているほか、カードを分解して物理的に不正に読み出すことも不可能な仕組みになっている。セキュリティについては十分に考慮されているのである。

 そもそも住民基本台帳ネットワークシステムも住民基本台帳カードも、行政の効率化と行政サービスの向上のために導入されたものである。すでに相当の予算を投じてきており、これからも維持運営のためにかなりの税金が使われることになっている。とすれば、投資した金額以上の便益があって当然であろう。これらの仕組みによって、行政が効率化され、われわれの生活が便利にならなければおかしい。個人情報保護やセキュリティ対策を十分に行うことも大切であるが、国、地方自治体はこれらの仕組みを十分に利活用するために取り組みを積極的に進めるべきである。
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