テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標

<テイクオフe-Japan戦略II>17.港湾手続きのシングルウィンドウ化

2003/11/24 16:18

週刊BCN 2003年11月24日vol.1016掲載

 輸出入・港湾関連手続のシングルウィンドウシステムが今年7月から稼動を開始して、国土交通省が所管する港湾EDIシステムの申請件数も10月に月4万件を突破した。その内シングルウィンドウの利用は導入して3か月目で約5000件を超えており、まずは順調な滑り出し。今年度内には港湾EDIを利用できる重要港湾も50港から90港に増える見通しで、一層の利用拡大を促進したい考えだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

5機関への申請一元化

 シングルウィンドウ化は、行政手続のオンライン化のなかでも、縦割り行政の弊害を排除して利用者の利便性向上に大きく寄与する機能として期待されていた。輸出入・港湾関連手続でも、外国貿易船の入港届だけで、税関(財務省)、入国管理局(法務省)、検疫所(厚生労働省)、港長(海上保安庁)、港湾管理者(地方自治体)の5機関に申請を行う必要がある。

 さらに外国貿易船が港を利用する場合の手続きは、入港前に、(1)係留施設使用許可申請、(2)入港通報、(3)夜間入港許可申請、(4)危険物荷役許可申請、(5)航路通報など、入港時に(6)入港届・明告書⑦乗員上陸許可申請など、出港時には(8)とん税等納付申告、(9)出港届など、非常に多岐に及んでいる。これら手続きのコンピュータ化は、各省別に進められてきた。税関では1991年から専用線を使ってSea-NACCS(海上貨物通関情報処理システム)の運用を開始しているが、インターネット接続が可能になったのは今年から。国土交通省では、港長と港湾管理者向けの手続きをインターネット経由で行える港湾EDIシステムを99年10月から供用開始したが、その時点ではNACCSと港湾EDIでは端末は別で、検疫所と入管は紙で申請書類を出す必要があった。

 政府のe-Japan戦略がスタートした01年9月には、「輸出入・港湾手続関連府省連絡会議」が設置され2年がかりでシングルウィンドウ化の実現にこぎつけたわけだ。今回のシングルウィンドウ化は、基本的には既存システムを生かして連携する形を取っている。紙申請だった入管では新たに乗員上陸許可支援システムを構築、検疫所は港湾EDIシステムを機能拡張することで電子化に対応。港湾EDIシステムとSea-NACCSがそれぞれにシングルウィンドウ用申請画面を新たに用意した。例えば港湾EDIシステムに接続してシングルウィンドウ画面を開いて入力し送信しても、他の2つのシステムに自動的にデータが配信される仕組み。手続きごとに法律規定で異なっている申請タイミングも統一することで、一度のデータ送信で全ての機関への申請手続きができるようにした。

 シングルウィンドウ用申請画面は、NACCSがローマ字入力にしか対応していないため、ローマ字で入力しなければならないが、参照画面を呼び出すことができるので、船舶の基本情報など必ず記入しなければならない項目を申請書ごとに入力する手間を省くことが可能だ。「港湾EDIの利用状況は、01年の入港データから試算すると2割程度にとどまっていた」(中村謙治・国土交通省港湾局環境・技術課港湾情報化推進室課長補佐)。これまでは部分的なIT化で紙申請も残っていたため、IT導入のメリットを十分に享受できなかったのは確かだろう。このほかにIT化普及を阻害している要因もいくつかあるようだ。果たしてシングルウィンドウ化が導入されたあと、利用状況が今後どのように推移していくのか。インターネットの普及率並みへ利用率を引き上げてくための施策が求められることになる。

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