視点

上海で違法コピー撲滅運動

2004/01/19 20:45

週刊BCN 2004年01月19日vol.1023掲載

 昨年、この欄でも触れた「ACCS上海事務所(準備室)」を10月に設置した。中国の違法コピー率は、BSAの調査によると92%だと言う。著作権情報センター附属著作権研究所の調査でも、日本製ゲームソフトの侵害品の割合は、上海だけで95%、被害額は2355億8800万円相当におよび、中国全土では1兆1325億1700万円相当の被害が生じていることが推計されている。しかし、WTOに加盟するなど産業の近代化を急ぐ中国で、ワープ現象として一気に事態が改善することは十分あり得ると考えている。とくに上海は、他の地域と異なりソフト開発やコンテンツ産業に官民あげて注力しており、デジタル産業への理解は高い。

 実際、上海市の版権局が現地組織の違法コピーについて立入調査をしたとの報道もある。また、BSAのメンバー企業も、上海の組織内違法コピーに対し、民事訴訟を提起したとの話も聞いている。私も昨年末、インドのデリーで開催されたBSA主催のITサミットに参加し、中国における著作権問題についてBSA首脳とも話し合ってきたところだ。こうした環境の中、ACCSは上海での活動を、まず日系企業の違法コピー対策から始める。今後、BSAや中国当局が中国の現地企業に対して、ときに法的措置を執ることもあるだろう。そのとき、日系企業が摘発されたらどうだろうか。私は、他国で実力行使をする前に、まず自国が襟を正すべきと考える。昨年、中国ではさまざまな反日デモが行われたが、きっかけは当局の動きにあったとの見方もある。そうした政治環境、社会環境のなかで、リスクを排除する意味でも、日本企業が法を遵守するのは当然のことである。

 上海の日系企業は2700社と言われている。これらの企業に対して、大塚商会の現地法人およびクオリティ社とも協力しながら違法コピー撲滅作戦を展開していく。日本にある本社においても、中国でのリスクを認識いただき、現地法人の対策を積極的に進めて欲しい。なお、ACCSは大塚商会とともに、国内で中国をテーマとしたセミナーを開催する。1月28日に「中国におけるライセンス/ソフトウェア管理セミナー」を、2月と3月には東京、大阪、名古屋で「中国の日本企業が危ない!-ソフトウェアライセンス危機管理-」を開く。詳しくは、大塚商会またはACCSホームページで確認いただきたい。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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