WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第187回 ASPモデルを積極化

2004/01/26 16:04

週刊BCN 2004年01月26日vol.1024掲載

 米国ではASP(アプリケーションサービスプロバイダ)方式を含む、ソフトのITサービスとしての販売が、完全に離陸状態になったことを多くのソリューションプロバイダ(SP)が感じ始めた。オラクル、SAP、シーベルなど大手ソフトベンダーも、自社新ソフト拡販の市場への導入手法としてはASPモデルが有効だと考えている。ASP方式でソフトを利用し始めれば、ユーザーが永く使うことにしたソフトはライセンス販売できる。これら大手ベンダーではシーベルがいち早く自社ソフトをASP形式で提供するためIBMと提携し、IBMオンデマンドセンターでのホスティングサービスを開始した。

米国のソフト市場

 IDCは2002年米国で22億ドル(2420億円)のサービスとしてのソフト市場は、07年には53億ドル(5830億円)となり、そのうちASP方式も12億ドル(1320億円)から3倍近い35億ドル(3850億円)になると予測する。米国企業、特にエンタープライズではIT-ROI(投資対効果)が厳しく追求されているため、エンタープライズのIT部門は大きな初期投資を避けるためにも、ASP利用を積極化している。

 またIBM、HPなどがインターネットを介するITアウトソーシング、e-ソーシングサービスを積極化していることもあって、エンタープライズのソフト処理需応に応えられるインターネットベースのITインフラも充実してきた。特にASP方式での利用が増えているソフトはCRM(顧客情報管理)で、米国の有力CRMベンダーはほとんどがASPサービスを開始した。いずれにせよ、企業ITはこれまでの自社での「全面所有」方式から、サービスの「利用」方式へ移ることは明らかである。

 そんななか、ASP利用へ移るプロセスで、これまでハード、ソフトを一体化して「売り切り方式」でビジネスを行ってきたSPはどう商売を展開すればよいのかについて悩むのは当然だ。しかしASP方式でも、顧客にソリューションを販売するのは、ソフトベンダーのパートナーであることに変わりはない。従ってソフトベンダーは自社ソフトのASP販売の場合、月々の利用料の一定割合をパートナーに支払う報酬制を採っている。CRMのSP、シカゴシステムズのカール・ロビンソン社長は「われわれのビジネスは、これまでの販売時の一過性売り上げから、長期にわたる継続的収益に移る。そのための財務体質の改革も行わなければいけない。従来のままでは、ビジネス移行初期に多くのSPでは運転資金ショートに陥ってしまう」と語っている。

 ロビンソン社長は、SPの主要な役割もこれからは変わると、次のようにアドバイスする。「SPの重要な役割は、ITの構築ではなく顧客ビジネスの強力なアドバイザーになることだ。ビジネスプロセスの再設計による顧客のバリュー増大からSPへ対価が支払われるようになる。このバリューにはSPのもつITナーレッジが重要なのだ」(中野英嗣●文)

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