変貌する大手メーカーの販売・流通網

<変貌する大手メーカーの販売・流通網>第4回 日本ヒューレット・パッカード 「ハイブリッド戦略」でデルに対抗

2004/02/02 20:42

週刊BCN 2004年02月02日vol.1025掲載

 合併による“空白の1年間”を経て、昨年、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は蘇った。復活までには、旧コンパックコンピュータとの製販・流通網の違いから混乱もあったが、わずか1年間で、ウェブ、テレセールス、パートナーの各方面から攻める「ハイブリッド戦略」が完成した。もちろん根底には“デル対抗”がある。ウェブ主体のBTO(受注生産)方式など、デル方式を追随しながら、日本的なチャネル戦略を加えた販売・流通網を構築した。昨年、日本HPのパソコン販売台数は38%も伸びたが、さらに新体制が真価を発揮することで、今年も勢いを維持することだろう。(谷畑良胤●取材/文)

ウェブとパートナー経由の両輪で

■価格戦略で復活

 旧コンパックコンピュータとの合併に揺れた2002年は、販売・流通網の統合で混乱し失速。「デルに惨敗した」(窪田大介・執行役員パーソナルシステムズ事業統括チャネルパートナー営業統括本部統括本部長)。ところが、昨年1月、IAサーバーの価格を最大35%引き下げ、「デルと真っ向勝負して、半ば勝利した」(同)と、復活の足がかりをつかんだ。

 昨年の国内企業向けパソコン販売台数は、IAサーバーの相乗効果で前年比38%も伸びた。「低価格路線だけでなく、チャネル戦略を確立し、それが機能し始めたのが大きい」(甲斐博一・パーソナルシステムズ事業統括マーケティング本部マーケティング部マーケティングプログラムグループ担当マネージャ)と、eコマースとチャネル販売の融合へと戦略を転換したことが、急成長を牽引した。

■「ダイレクトプラス」と間接販売

 日本HPが昨年から本格化させた販売戦略は、ダイレクト販売とパートナーを通じた間接販売の2つ。ダイレクト販売は、合併前の日本HP時代から開設していたオンラインストア「ダイレクトプラス」によるウェブ直販だ。24時間、ウェブや電話でハードウェア、ソフトウェア、周辺機器の注文・見積を行う。CTO(注文仕様生産)と呼ばれる方式で、注文が入り次第、部品を組み上げる。

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 直販の窓口となる「ダイレクトプラス」では、セットアップやシステム構築の責任者がいない中堅・中小企業向けにCTO製品の販売と構築支援を行うシステムインテグレータと大手ディストリビュータ40社で構成する「ダイレクトパートナー」と呼ぶ仕組みがある。「これが、デルとの大きな差別化になった」(竹尾直章・パーソナルシステムズ事業統括eCommerce営業本部本部長)という。

 「ダイレクトパートナー」は、ダイワボウ情報システム(DiS)や大塚商会、キヤノン販売など大手ディストリビュータを中心に40社。このほか、従来のチャネル販売を行う「SIパートナー」として、伊藤忠テクノサイエンス(CTC)やアルファテック・ソリューションズ、菱洋エレクトロといったシステムインテグレータなどが名を連ねる。いずれも日本HPのIAサーバー「Proliant(プロライアント)」を企業に提案できるノウハウを持ったパートナーだ。SIパートナーは、一部で「ダイレクトプラス」の販売営業も行っている。

 「ダイレクトプラス」やパートナー経由で販売されるCTO製品は、社内では“決め打ちモデル”と呼ばれている。日本HP内にSKU(製品在庫保管ユニット)を置き、注文に応じて組み立てるため、販売パートナーは在庫を抱える心配がない。

 また、このシステムでは、パソコン受注後の納期を「標準5営業日以内」とし、システム構築の場合でも「最短10日」と業界最速で完了する。窪田執行役員は、納期の短縮で、「流通コストを極限まで抑え、低マージンで製品を送り出すことができるようになった」と主張する。

 間接販売については、全国約1000社の「ダイレクトリセラー」を通じた販売ルートもあり、パソコンやローエンドIAサーバーなどを扱っている。実は02年までは、「ダイレクトリセラーの6割が、ユーザーからの注文で止むを得ずデル製品を売っていた」(窪田執行役員)という。だが、低価格や流通網の改革により、03年は「デルと競合する案件で8割は勝利した」(同)という。

■チャネル重視を貫く

 日本HPは03年6月、パートナー向け技術者支援制度も開始した。旧コンパックと旧日本HPそれぞれの支援制度を整理して、新たに「HPサーティファイド・プログラム」を設け、パートナーの技術者トレーニングをスタートしている。「技術者支援制度ができて、ようやく競合他社に追いつき、対等に競争できる体制ができた。これからのパートナーは数より質が問われる」(窪田執行役員)と、大手ITベンダーがパートナー支援を強化するなかでの出遅れを挽回した。

 日本HPでは、ダイレクト販売とパートナー経由販売の両面からのアプローチを「ハイブリッド戦略」と呼ぶ。ただ、ウェブ販売が販売台数増に貢献したのは事実だが、販売台数全体からみれば6割がパートナー経由。「顧客の中心は中堅・中小企業。パートナーとの協力は依然として重要だ」(竹尾本部長)と、あくまでチャネル販売を重視していく方針だ。

 現在、プリンタ以外のコンシューマ製品を日本HPとして量販店向けに販売はしていない。ワールドワイドでは、デルに対抗するためにデスクトップ「HPパビリオン 2000」などを個人ユーザー向けに販売しているが、「価格競争力のある製品がなく、日本では(コンシューマ向けに)販売できない。パソコン量販店でのコンシューマ向け販売でも利益が出て需要が見込めるようになれば、量販店向けの販売も検討する」(竹尾本部長)と、コンシューマ向けを決して無視しているわけではないという。

 今、量販店に並ぶHPのパソコンは、全てダイワボウ情報システムや丸紅インフォテックなどのディストリビュータが量販店に販売したもの。基本的には企業向けの仕様が店頭に並んでいるわけだ。

 低価格と流通体制の構築、そして昨年の販売実績が新規ユーザー開拓の武器として揃った。「HPブランドを買いたいというマインドシェアは確実に高まった」(窪田執行役員)と販売攻勢は勢いを増している。
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