立ち上がるグローバルサプライチェーン ロゼッタネットの衝撃

<立ち上がるグローバルサプライチェーン ロゼッタネットの衝撃>23.OMJ活動 III ─加速するRN標準実装と急変するビジネス

2004/02/09 16:18

週刊BCN 2004年02月09日vol.1026掲載

 OMJ参加企業によるロゼッタネット(RN)標準の実装数は2002年に爆発的に増加した。図の左のグラフは、OMJ活動のベースとなった00年の実装トライヤル(e-Concert in Japan)と、01年、02年の新規実装実績を比較したものである。00年度に比較して取引先数で18倍、PIP接続数で52倍に増加している。さらに、1取引先あたりのPIP接続数も劇的に増加しており、02年の実績で参加企業平均で4.3PIP、最も大きい会社では6.2PIPに達している。

 加えて、01年度にはほとんど実装されていなかったPIP3C系(財務管理・返品)、4A系(需要予測)の実装が増えているのが分かる。こうした実装パターンの変化の理由は、OMJ WGの主要参加メンバーである大手セットメーカーの置かれている状況を考えるとよく理解できる。セットメーカーは生産工場や部品調達の海外シフト、製品寿命の短期化や市場競争の激化による低価格化といった環境の変化にさらされており、調達先のグローバル化や製造コストの削減、販売チャネルからの需要に柔軟に対応した生産体制の確立が至上命題となっているからである。

 OMJ参加企業およびその取引先を対象に行ったロゼッタネット標準導入効果調査(ROI調査)によれれば、ロゼッタネット標準導入の目的は以下のように大別される。
・JEITA/CII標準に対応できない海外取引先への導入
・需要予測と発注の組み合わせによる調達リードタイムの短縮、在庫・生産管理の高度化
・VMI(Vendor Managed Inventory)の導入とそれにともなう確定注文の廃止、在庫リスクの回避
 これらは全て、海外取引先との取引の電子化、製品在庫・部品在庫の圧縮、ボリュームディスカウントの拡大による調達コストの削減、調達リードタイムの圧縮によるキャッシュフローの改善といった課題を解決するためものである。

 OMJ活動によるROI調査の結果、OMJ参加企業が、単純に受発注プロセスを中心にしたEDI(電子データ交換)の置き換えではなく、グローバルな調達・販売に対応したSCM(サプライチェーンマネジメント)の効率化、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)の推進のためのツールとして、ロゼッタネット標準の導入を推進していることが明らかになっている(簡単な算数の問題で、例えば年間数百万円から数千万円のEDI使用料を削減するよりも、年間100億円の調達コストの1%を節減する方がはるかに効果が大きいことは明白である)。

 OMJ WGでは、ROI調査の結果を元に、需要予測の高度化やVMIの導入によるリードタイムの短縮や在庫圧縮の効果をモデル化し、導入効果を簡単にシミュレーションできるツールも開発している。ツールがシミュレートするモデルは、IT業界においても十分に適用可能であると考えられるので、興味のある方は是非参照されたい。ROI調査報告書やROIツールをはじめとしたOMJ活動の成果物は、全てロゼッタネットジャパンのウェブサイトで公開/公開予定である。

 これまで、3回にわたりOMJ活動の概要を紹介してきた。海外においてもシスコシステムズ、ノキア、ヒューレット・パッカード(HP)、IBMといった国際企業がロゼッタネット標準の導入を積極的に推進しており、デファクトスタンダードとしての地位が確立している。さらに、これまでのIT、EC、SM業界といったハイテク業界にとどまらず、物流や金融業界への展開も現実に動き始めている。日本においても、国際的な物流プロセスとVMI取引をリンクさせたクロスボーダーVMI WGが30社近くの参加を得て活動を開始するなど、新しい展開が始まりつつある。本原稿が、読者のビジネスの成功に向けたロゼッタネット標準導入に一助になれば幸いである。(NTTコミュニケーションズ ロゼッタネットジャパン OMJ WG主査 伊坂 広明)
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