企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>13.デル封じ込めに動くヤマダ電機

2004/03/29 20:43

週刊BCN 2004年03月29日vol.1033掲載

 この連載も残り3分の1となり、好調デルのライバルの動きや死角を追っていきたい。好事魔多し。必ずスキはある。デル日本法人のライバルとして注目したいのがヤマダ電機である。「なぜ」と思われる方もいるかもしれないが、同社は歴とした国内最大のパソコン販売業者である。2003年度は120万台、デル以上の販売量を持つ。そのヤマダ電機では今、山田昇社長が「自社ブランドパソコンでデルを追い抜け」と檄を飛ばしている。トップを走るがゆえ、デルの脅威は人一倍感じているのかもしれない。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 同社は1月、オーダーメイドパソコンの老舗、フロンティア神代を子会社化。神代から専用モデルを調達し、全店に配備する。自社ブランドパソコンの販売へ本格的に取り組み出した。パソコンが日用品化してくれば、必ずしもナショナルブランド(NB)製品でなくとも満足するユーザーが増える。すでに法人ユーザーで、その傾向が強まる。そのユーザーをデルに奪われるか、自社で取り込むのか──。ヤマダ電機が自社ブランドパソコンに強くこだわる理由である。

 ヤマダ電機はここ1─2年で、パソコン全販売量の2割を神代製品など自社ブランドパソコンにしていく計画だ。30万台程度の規模になる。これに神代の直販分を加えれば、シェア下位のNBメーカーに並んでしまう。関係者によれば、ヤマダ電機が全店舗に神代製品を配備した3月、その販売数量は月間1万台のペースに達したという。年間では10万台を上回ることになり、販売力の底力を見せつける。

 神代は93年からオーダーメイドパソコンの直販を国内で手掛けているだけに、その技術力や品質管理体制は侮れない。自動車メーカー向けに専用情報端末を企画・製造するなど、“メーカー”として評価されている。その神代のメーカー機能と、3月末には専門量販店として史上初めて売上高1兆円を達成するヤマダ電機の販売力。この2つの要素が絡み合った時、どのような相乗効果が生まれてくるか。なかなか興味深いところだ。ユーザーへ直接100万台以上のパソコンを販売するデルとヤマダ電機。バーチャルとリアルの垣根を超えてバッティングする場面は広がってくるだろう。
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