情報化新時代 変わる地域社会

<情報化新時代 変わる地域社会>第16回 福島県会津若松市(下) 06年度までの3か年基本計画を策定

2004/08/30 20:43

週刊BCN 2004年08月30日vol.1053掲載

 福島県会津若松市は、2004年度(05年3月期)から06年度までのIT化に向けた取り組み「第2次地域情報化基本計画」を進めている。昨年度までの基本計画は、IT化に向けた取り組みとして情報通信基盤の整備が主流だった。今年度からは、市民に向けた行政サービスを充実するためのIT化に取り組んでいく。なかでも、力を入れているのはICカードによる利便性の向上とインターネットを通じた情報配信の強化。同市は、市民によるインターネットの利用やパソコンの普及率が全国平均より低いもののニーズは高い。しかも、3町村との合併を控えていることから、広域で均一な行政サービスの提供が必要と判断した。(佐相彰彦)

情報通信基盤の整備は完了 次のステップは市民サービス

■ICカードの普及を促進

 会津若松市の01年度から03年度までのIT化に向けた計画「会津若松市地域情報化基本計画」で取り組んだ施策は、市内にある34か所の学校および公共施設を光ケーブルによる高速ネットワークでつなぐ地域イントラネットの構築やICカードの発行および公共施設への端末の設置、IT基礎講習会や情報専門技術研修の開催など、情報通信基盤を整備することなどだった。宮崎正人・会津若松市総務部情報政策課情報管理グループ主事は、「情報通信基盤の整備が主流で、国の流れに沿った代表的なもの。特に先進的なものではなかった」と振り返る。

 そのため、04年度から06年度までの3か年計画「第2次地域情報化基本計画」を03年度末に策定。(1)身近な生活環境のユビキタスネットワーク化、(2)会津ブランドを生かした地域産業の活性化、(3)地域連携によるソフト基盤の整備──を基本とし、03年度までのインフラ整備を生かした行政サービスの充実を図っていく。宮崎主事は、「会津若松市らしい行政サービスを提供していくためには、市民にとって利便性の良さを考えたものにしなくてはならない」と強調する。

 同市では、住民基本台帳カード(住基カード)の発行とともに、市独自ICカード「Aoiカード」を利用している。Aoiカードが提供しているサービスは、住民票の写しや印鑑登録証明書の自動交付、医療費助成申請、図書館利用、各商店街のポイント提供、金融機関のキャッシュカードとしての利用など。一方、住基カードは住民票写しの広域交付や転入・転出の特例処理、身分証明書としての活用などに限られる。「住基カードとの違いを明確にしてきたが、今後の両カードの発行枚数や利用形態をみながら、Aoiカードとの統合を図っていく」としており、Aoiカードのサービスを重視して住基カードに各種サービスを増やす環境を整える。

 Aoiカードの所有者は、昨年末の時点で市民全体の人口比14%程度と、まだまだ少ない状況だ。しかし、医療助成申請サービスを中心に所有者の約半数がAoiカードを最大限に活用しているという。「今後は、商店街ポイントサービスの提供店数の増加や自動交付機で発行できる証明書の種類を増やす」ことを計画しており、現段階で関係団体などとの協議を進めている状況だ。

■サイトの充実でパソコン利用者増へ

 同市では、携帯電話など移動通信機器への情報配信を活用する市民が多い。市が独自に行ったアンケートでは、市民の3人に2人が携帯電話を利用しており、そのうち67%はメールの送受信やホームページの閲覧で携帯電話を頻繁に活用しているという。そのため、市では携帯電話対応のホームページを作成。サイト内は、「市民相談窓口」や「子育て支援」のページを用意しているほか、登録者には災害などが発生した際の緊急避難情報や被災状況のリアルタイムな情報も発信している。宮崎主事は、「誰もが手軽に行政サービスを入手できるという点で市民から好評を得ている」と自信をみせる。

 一方、パソコンの世帯普及率が62%、パソコンを使ったインターネットの利用率は44%と、どちらも全国平均より10%程度低い。しかし、インターネットを利用していない市民の70%は「利用したい」というニーズがあるという。そのため、将来的にはパソコンを活用する機会を増やすサービスを強化。市民行政参加を促すことも狙いとして、ホームページを活用した電子会議室やパブリックコメント制度などを実施する計画を立てている。

 また、学校教育では保護者が参加できる「教育用ポータルサイト」を今年末にサービス開始する。同ポータルサイトは、各学校の教育活動および学校運営の状況、不登校対策、障害児教育、英語教育など教育委員会からの教育情報を提供し、保護者をはじめとした市民の学校教育に対する関心を高めることが目的。保護者にはIDとパスワードを配布し、サイト内の掲示板や相談窓口コーナーで学校教育に関する意見や要望なども言える場を設けるという。

 同市は、河東町と湯川村、北会津村の3町村との合併を控えている。Aoiカードのサービス拡充やインターネットにおける情報配信の強化は、「広域で均一な行政サービスが提供できることにもつながる」と、合併後を見据えた取り組みでもあるようだ。
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