変革セキュリティビジネス
<変革セキュリティビジネス>40.大手ITベンダーの動向
2004/10/18 16:18
週刊BCN 2004年10月18日vol.1060掲載
“連携”体制強化の方向へ
大手ITベンダーの取り組みのなかで多いのが、顧客対応のセクション単位やグループ会社ごとにビジネスモデルを構築してきたケースだ。セキュリティはすべての業種、システムに当てはまる分野。すべての案件で提案してきたジャンルだが、各部署単位またはソリューションを提供する子会社単位にそれぞれのビジネスを提案してきた例が多い。だが、セキュリティ市場が活発化するにつれ、扱う製品やサービスも拡大・多様化し、事業体制も複雑化してきた。事業体制が大規模なだけに、中堅・中小のITベンダーよりも事業の効率化の必要性は大きかったようだ。これまで各部署やグループ会社がそれぞれ持っていたノウハウや情報を共有し、扱う製品の共通化などが求められていた。
日立製作所は、17社のグループ会社と共同でセキュリティビジネスを展開できるように、必要な製品の選定からソリューションの立案、情報の共有化を進める専門部署を設けた。長谷川大造・情報・通信グループセキュリティソリューション推進本部部長代理は、「各部署、グループ会社がそれぞれの切り口でセキュリティビジネスを手がけるなかで、共有できるノウハウやスキルがある。セキュリティはニーズの変化が激しく、新製品も頻繁にリリースされる。製品検証にかける時間もコストも多大になる。製品・サービスが複雑化する現在の市場環境では、舵取り役が必要だった」と説明する。
NECネクサソリューションズでも1昨年後半に、マーケティング、自社開発製品の企画、販売促進といったセキュリティビジネスの戦略立案組織をいち早く設置。業種別、地域別単位で事業部を設けている同社にとって、横断的に各部署と関連する異例の組織だ。太田元治・セキュリティビジネスセンター長は、「セキュリティビジネスの範囲が広がり複雑化したなかで、競合他社も力を入れ始めており競争は厳しい。知識とノウハウの共有を図るための、社内全体のセキュリティビジネスを一本化した組織が必要だった」と、日立と同様の戦略だ。
一方、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、戦略立案部隊は設置せず、各部署、各グループ会社にセキュリティ事業を任せている。しかし、各事業部やグループ会社で手掛けるシステムのセキュリティを上流工程から検証する専門人員を置いている。昨今の社会環境から、今年急速に市場が広がったセキュリティ。だが、市場の成長スピードに社内の事業体制が追いついていなかった面もあった。(木村剛士)
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