e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>7.ITSセカンドステージへ

2004/10/18 16:18

週刊BCN 2004年10月18日vol.1060掲載

 ITS(高度道路交通システム)の本格普及に向けた議論が活発化してきた。「ITS世界会議愛知・名古屋2004」が18日、名古屋市の愛知芸術文化センターとポートメッセなごやで開幕、来年3月には“IT時代のエキスポ”を標榜する愛知万博「愛・地球博」の開催も控えており、ITSに対する国民の認知度も一気に高まるのは間違いないところ。これを機に、今後のITSをどのように推進していくべきか、普及に向けた戦略策定と体制整備が急務となっている。「ITSに関係する4省庁の5局長が一堂に集まるのは初めてで、これまでにない画期的なこと」──。今回のITS世界会議を主催する民間団体ITSジャパン(豊田章一郎会長=トヨタ自動車名誉会長)の関係者は、このほど開かれた「日本ITS推進会議」の意義をそう説明する。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 日本ITS推進会議は、ITSジャパンの呼びかけでITSに関係する産官学とユーザーの代表が集まり、ITS世界会議で日本が発信するメッセージ「ITS推進の指針」を取りまとめようと、今年9月8日に第1回会合を開き、発足した。委員長はITSジャパン副会長の坂内正夫・国立情報学研究所副所長が就任し、日本経団連副会長の吉野浩行・本田技研工業取締役相談役、日本自動車工業会会長の小枝至・日産自動車副社長、電子情報技術産業協会副会長の谷口一郎・三菱電機会長、日本土木工業協会会長の梅田貞夫・鹿島建設社長などが参加。ここに、警察庁交通局、総務省総合通信基盤局、経済産業省製造産業局、国土交通省の道路局と自動車交通局の5局長も顔を揃えた。

 今月8日に開かれた第2回会合で「ITS推進の指針(案)」が事務局から示されて採択、ITS世界会議の場で正式発表されることになった。指針の主な内容は、カーナビ累計台数約1500万台、道路交通情報通信システム(VICS)約1000万台、自動料金支払いシステム(ETC)370万台に達している現状を紹介し、ITS機器の普及に向けたファーストステージは目覚しい成果を上げたと評価。今後は、実用・普及とその促進化に向けたセカンドステージに入るとの認識を示す。

 ITSによってめざす社会像は「安全・安心な社会の実現」、「環境にやさしく効率的な社会の実現」、「利便性が高く快適な社会の実現」の3つを挙げ、今後おおむね5年をめどに、(1)道路交通の安全性向上、(2)交通の円滑化・環境負荷の軽減、(3)個人の利便性向上、(4)地域の活性化、(5)共通基盤の整備と国際標準化・国際基準の策定等の推進──の5つの総合的テーマに重点的に取り組む必要性を指摘している。

 「誰が、この指針を進めていくのか。主語がない」(吉野日本経団連副会長)──。今回の指針とりまとめの議論では、厳しい意見も出された。会議はあくまでもボランタリーな性格のもので、指針の内容を実現していく主体がはっきりしていないからだ。政府では、96年に関係省庁による「ITS推進に関する全体構想」が策定したほか、e-Japan重点計画のなかでも関連施策が盛り込まれているが、これまでは関係省庁がそれぞれ独自の取り組みをバラバラに進めてきたとの印象は否めない。

 e-Japan戦略IIは先導的7分野(医療、食、生活、中小企業金融、知、就労・労働、行政サービス)で積極的なIT利活用推進を打ち出しているが、「ITSも先導的7分野と並べてもおかしくないほど大きく重要なテーマ」(坂内委員長)である。指針には「目的を共有する関係者が横断的に連携を図る場の形成と、実行段階における効率的かつ柔軟で、足並みの揃った役割分担が強く求められる」と明記された。ITSセカンドステージに向けた体制づくりは“待ったなし”となっている。
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