コンテンツビジネス新潮流

<コンテンツビジネス新潮流>5.コンテンツビジネス振興に向けた教育を(2)

2004/11/29 16:18

週刊BCN 2004年11月29日vol.1066掲載

 前回、コンテンツビジネスの振興のためにプロデューサーの養成など教育が重要であるということを、大学教育の日米比較などを交えて説明した。しかし、注視すべきは欧米ばかりではない。アジアでは、人材の養成を含め、コンテンツビジネスの振興策が着々と動き出している。(久保田 裕 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事)

 韓国では、映画館の上映日数のうち、一定以上を国産映画に割り当てなければならないという法律がある。また、テレビ放送のうち、国産の番組を一定割合以上放送しなくてはならず、さらに、一定時間を国産アニメの放映に充てなければならないそうだ。もちろん、文化防衛の観点も強いわけだが、このように法律によって市場を作り出す一方、政府が支援する組織が、映画学校とアニメ制作学校を設立し運営している。国を挙げてコンテンツビジネスの振興に取り組んでいる例である。

 中国においては、これまで海賊版の問題が常に指摘されてきた。確かに、今も海賊版が横行していることは否定できない。しかし、中国関連のニュースサイトを見ていると、中国政府の様々な部局が、それぞれ海賊版や違法販売などの取り締まりを進めていることが分かる。また、11月上旬、上海を訪問していくつかの大学で講演をしたのだが、その際の学生の反応や、後から届いた感想を読んでいると、社会のリーダーとなるだろう学生たちが知的財産への関心を高めていることを肌で感じている。

 このように取り締まりや学生の意識の高まりの一方、華東師範大学(上海市)で、バンダイや講談社が協力してアニメ教育を行うという情報もある。今後、日本のコンテンツホルダーや専門学校などが協力して、中国でのクリエイター教育が進んでいくことだろう。

 アジアの各国政府の取り組みの一方、日本でも、政府の後押しもあって、新しい動きも見られる。

 コンテンツクリエイター教育の専門学校で業界をリードしているデジタルハリウッドは、構造改革特区制度を利用して、株式会社として初めて大学院を設立した。また、東京大学大学院情報学環では、アニメやゲームなどのコンテンツ産業で国際的に活躍できるプロデューサー養成を目的に、コンテンツ創造科学産学連携教育プログラムを今年10月からスタートさせている。

 私はCESA(コンピュータエンターテインメント協会)の理事でもあり、積極的にこのような取り組みを支援していく。
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