視点

無線ICタグ元年

2005/01/03 16:41

週刊BCN 2005年01月03日vol.1070掲載

 今年、ITの世界に大きな変革をもたらすものを1つ挙げるとすれば、間違いなく無線ICタグ(RFID)だろう。パソコンや携帯電話がヒトをネットワークに結びつけたとすれば、無線ICタグはモノ、そして空間(場所)をネットワークにつなげることを可能にする。ユビキタス社会の実現に向けて、無線ICタグの秘める可能性は大きい。

 無線ICタグは、商品などのトレーサビリティ(追跡管理)やSCM(サプライチェーンマネジメント)を進化させるばかりか、製造から廃棄に至るライフサイクル管理、盗難防止、偽ブランド品の排除などに一役買うと期待されている。また、国土交通省の「自立的移動支援プロジェクト」は、道路や建物などの“場所”に無線ICタグを埋め込み、視覚障害者の移動支援に役立てたり、観光客のガイドなどに活用しようという試みだ。

 経済産業省では、IT利活用の最重要テーマの1つに無線ICタグを据え、普及に向けて各種の実証実験を活発化。また、総務省では、無線ICタグ用としてこれまで使用可能だった周波数帯に加え、比較的長距離通信が可能なUHF帯も利用できるよう、この3月にも規制緩和に踏み切る。

 こうして、いよいよ本格普及の時を迎えようとしている無線ICタグだが、ここで注意しなければならないのは、セキュリティに対する懸念ばかりがクローズアップされ、健全な発展の芽を寄ってたかって摘んでしまいかねない危険性をはらんでいる点だ。無線ICタグは汎用性が高い技術だけにさまざまな応用分野が考えられるが、あるアプリケーションでセキュリティ上の問題が生じたからと言って、個人情報などとは程遠いデータが記録されている無線ICタグまでが問題視されるようでは普及はおぼつかない。

 無線ICタグにどこまでの情報を記録し、それ以上の情報はどこのデータベースで厳格に管理するか。記録情報を不正に書き換えられないよう、どのようなレベルのセキュリティ技術を施すか。これらの構築手法はアプリケーションの中身によってそれぞれに異なってくるわけで、ここにIT業界が出すべき知恵は無数に存在する。

 アイデア次第でさまざまな応用が考えられるのが無線ICタグであり、セキュリティ技術、システム設計、運用ノウハウなどで新しい提案のタネはあちこちに眠っている。
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