未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>20.エスピック

2005/03/21 20:43

週刊BCN 2005年03月21日vol.1081掲載

自社開発パッケージを強みに

 エスピック(島至社長)は、ITベンダーからの受託開発ソフト事業と、エンドユーザー向けシステム構築事業をバランス良く手がけている。全売上高約9億円(2004年3月期)の内訳は両事業で半々の割合となっている。同じ規模のソフト開発企業に比べると、エンドユーザー向けビジネスの比率は圧倒的に高い。それでも、エンドユーザー向け事業をさらに拡大させる方針を掲げる。「(下請けでの開発事業は)案件数も減り、開発者の単価も今後上がらない」という島社長の判断からだ。

 エンドユーザー向けビジネスで競争力を高めるための具体策として自社開発パッケージソフトの販売事業を強化するという。

 ITベンダーからの下請けソフト開発事業は、NECグループなどの大手を中心に請け負っている。下請けソフト開発は、オフショア開発や地方のソフト会社を活用するITベンダーが増えていることから、「開発者の単価は下がり、プログラムを書くだけの仕事は減っている」(島社長)状況。単価は下がっても開発者の人件費は年々上がるため、「利益の確保はさらに厳しくなっていくだろう」と予測する。「1人月いくら」でのビジネスモデルでは、業績を拡大するのは困難というわけだ。

 一方、エンドユーザー向け事業には期待をかける。専任の営業担当者は置かず、営業も兼ねるシステムエンジニア(SE)数人で市場にアプローチ。決して潤沢な営業体制が確立されているわけではないものの、実績をもとに既存顧客からの紹介で受注を増やし、順調に顧客を獲得しているという。自社開発のパッケージソフトの存在が大きな武器となっているようだ。

 パッケージ事業を始めたのは、約8年前。これまで、物流管理ソフト「イーバ」や、アパレル業向け販売管理「SPA」、青果卸業向け販売管理ソフト「とまと」などを自社開発した。業種や顧客規模など、ターゲットを設定することはなく、多種多様なラインアップを揃える。

 パッケージ化の判断基準は、「社員がこれまでの経験やユーザーの声をもとに提案してきた内容を検討して採算が取れると判断できれば開発する」(島社長)。あくまで社員の提案を重視している。「現場を熟知する社員の声に応じ、パッケージ化に値すると納得できれば、若手でもチャンスを与えていく」(島社長)姿勢。全社員の要望をくまなく聞き入れる社内体制を重要視する。現場社員の声を反映させたパッケージソフトの拡充で、エンドユーザー向け事業を拡大させる考えだ。(木村剛士)
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