e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>40.電子申告の利用促進に向けて

2005/06/20 16:18

週刊BCN 2005年06月20日vol.1093掲載

 国税電子申告・納税システム(e-Tax)の利用件数は、今年3月末までで9万件に達した。名古屋国税局管内から運用を開始して1年半、年間2000万件にも達する国税申告全体から見れば立ち上がったばかりだが、サービス地域とメニューを拡大しながらシステムの安定稼動を図るという最初の関門はクリアしたと言える。今後の課題は利用促進。納税者や税理士などにe-Tax利用のメリットをどう認識してもらえるかが焦点だ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 e-Japan戦略で新たに導入されたITサービスの多くが利用促進で苦戦を強いられてきた。今年5月に利用率が40%を突破した高速道路のETC(自動料金収受システム)。高速道路を利用する車を対象とした利用率でみても、01年4月に導入して1年目が1.6%、2年目4.7%と低迷。割引料金などのインセンティブを積極的に導入しても40%を超えるのに4年以上かかった。ETC車載器セットアップ数も累計700万台を超えたものの、保有台数で計算した普及率はまだ10%に満たないのが実情だ。

「利用促進のポイントは、どれだけ法人に使ってもらえるか。税理士にも積極的に活用して欲しい」──。国税庁の岩崎吉彦・情報技術室長が狙いを定めているのも、申告・納税手続きを頻繁に使う法人納税者と税理士である。前回の体験記で指摘したように、年1回しか申告手続きしないような納税者では電子申告のメリットも実感しずらい。「公的個人認証の普及促進に電子申告が期待されている面もある」(岩崎室長)というが、確定申告のために個人が公的個人認証をわざわざ取得するとは考えにくいだろう。

 法人利用の場合、法人税申告だけでなく、消費税申告、源泉所得税の徴収高計算書や、源泉徴収票などの法定調書の提出、電子納税など利用できるメニューも多い。なかでも消費税の申告・納税と、源泉所得税の計算書提出・納税は、通常は毎月行わなければならない作業だけに、法人もオンライン化するメリットは十分にある。法定調書の提出も回数が限られるが、大手企業などでは磁気テープ等を税務署に持ち込むほどデータ量が多い。これらの磁気テープ等をデータセンターで処理するなどの手間もかかっていた。

「源泉所得税や法定調書などはe-Tax利用のメリットは十分にあるはずだが、法人税申告と比べても利用状況が低い」(岩崎室長)。その理由の1つに挙げられるのが、電子納付に対応した金融機関チャネルの整備が遅れている点だ。電子納付を行うには、日本マルチペイメントネットワーク運営機構が運営するマルチペイメントネットワーク(MPN)の収用サービス「Pay-easy(ペイジー)」を利用する必要があるが、ペイジー利用の前提となるインターネットバンキングサービスをメガバンクのみずほ銀行でさえ法人向けにはサポートしていない状況にある。さらにATM(現金自動預払機)の振込み機能が利用できるようになれば、パソコンを利用できない人でもペイジーが使えるようになり、電子納税も一気に増えると考えられるが、ペイジー対応のATMを導入している金融機関はまだ5行程度に止まっている。

 昨年9月に国税庁は金融機関に対してペイジー利用環境の充実を要請、今年5月に日本銀行でも業務局長の説明要旨「国庫金事務の電子化について」で、電子納付の普及に取り組む姿勢を明確化した。さらに今年2月にスタートした地方税の電子申告・納税が普及すれば「国税とあわせて税理士にとってもIT化のメリットが高まり、利用促進が図られる」(岩崎室長)ことも大いに期待できるだろう。

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