e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>56.評価専門調査会第5次中間報告(上)

2005/10/17 16:18

週刊BCN 2005年10月17日vol.1109掲載

 IT戦略本部の評価専門調査会(庄山悦彦座長=日立製作所社長)が、次期IT国家戦略の策定に向けた提言をまとめた第5次中間報告書を公表した。調査会はe-Japan戦略Iで掲げたインフラ整備、電子商取引などの重点5分野、戦略Ⅱの医療、教育などの先導7分野、技術競争力などの共通課題について11月にも最終報告書を作成する予定だが、今回の報告は次期戦略の検討作業に合わせて最終報告書に盛り込む内容を一部前倒ししてIT戦略本部に報告したもの。2003年12月からの活動を通じて議論してきた内容を「総論:新IT戦略に向けた7つの基本的視点」としてまとめたのが特徴だ。中立的な立場からe-Japan戦略を評価してきた調査会の提言が、次期戦略にどのように反映されることになるのか。座長代理の國領二郎・慶応義塾大学教授に話を聞いた。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 ──第5次中間報告書の狙いは。

 國領 9月22日に開催された、新戦略の基本方針を話し合うIT戦略本部の32回会合に向けて、調査会としての意見を求められたため。現行戦略を評価するのが調査会の本来の役割だが、IT戦略の大きな流れを調査会がどう考えてきたのかを入れないと思想が見えないと考え、各論だけでなく、総論として“7つの基本的視点”を加えることにした。私が原案を書き、各委員にメーリングリストで諮って煮詰めてきた。

 ──基本的視点で、成果指標(KPI)の活用を提言しているが。

 國領 約2年間に及ぶ活動を通じて、最大の悩みは「何を評価すればよいのか」が明示されていなかったことだ。これまでのe-Japan戦略は目標が漠としか書かれていなかったために、調査会の方で数値を設定して評価せざるを得なかった面がある。まずは、どのようなKPIであれば実効性のある評価ができるのかを議論し、精査してきた。それに対して、担当府省からは想定していなかった評価基準を持ち出してきて評価されるのでは堪らないとの声もあったが、どのような評価基準が良いのかを明らかにできたと考えている。この成果を使ってもらえれば、次期IT戦略に有効なKPIを盛り込むことができるのではないか。戦略に明記されたKPIに基づいて評価専門調査会がレビューする──これが本来の姿だろう。KPIが全く無いところで評価するのは正直、かなり辛かった。

 ──調査会の運営を財政的、制度的に担保していく必要性も指摘した。

 國領 やはり予算をあらかじめ確保しておくことは必要だろう。これまでは関係府省の予算から一部費用を工面して、海外への派遣調査などを行い、評価のための国際的なベンチマークも整えたが、かなり大変な作業だった。(厳しい予算のなかでも)評価できる体制はできたと考えているが、第3者機関が行う評価(チェック)は成績が良いか悪いかを決めるものではない。目標の達成度合いが悪ければ、何が原因で、どこを直せば良いかを判ることが重要であり、それによって次の改善(アクション)が講じられ、PDCAサイクルが回っていくことになる。

photo

 ──新しいアイデアとして「スーパーモデル構造改革特区」を提案した。

 國領 ある委員から正式意見として出てきたもので、構造改革の道具としてITの利活用を推進するには規制改革などを一体的に行う必要があることは判っていたが、これまでは散発的な取り組みになりがちだった。これを打破するために特区を導入して、集中的な取り組みを行い、ITの効果を国民に実感できるようにすべきだろう。
  • 1