コンピュータ流通の光と影 PART IX

<コンピュータ流通の光と影 PART IX>拡がれ、日本のソフトウェアビジネス 第33回 香川県

2005/11/28 20:42

週刊BCN 2005年11月28日vol.1115掲載

 全国展開する大手企業の多くが、四国地区のヘッドクォーターを置く香川県。四国だけでなく、瀬戸大橋でつながる岡山県とも経済的なつながりは深く、企業活動も活発だ。IT投資への意欲も高いが、それだけに、ここを地盤にする情報サービス産業にとって、次の成長へ向けた舵取りは、容易でない。(光と影PART IX・特別取材班)

堅調な製造業のIT投資を背景に、地元戦略を探る情報産業

■統合効果生かしCS向上に新施策

photo 富士通グループは2004年10月、それまで四国各県に配置していたシステム・エンジニアリング(SE)会社を富士通四国システムズとして統合し、本社を高松市に置いた。白山健一社長は「業種ごとに四国全体のマーケットを見渡せるようになり、責任も明確化した。それぞれの会社が持っていたノウハウを、各県内に閉じ込めるのでなく、共有できるようになったことは大きい」と、統合のメリットを語る。

 各県ごとの市場規模はともかく、業種の構成は似通っていたため、4社が独自に対応しなければならない「非効率」があったのも事実。その非効率が解消された。

 SE部隊の統合は、富士通本体にとっても四国でのビジネスを改革する契機となった。富士通の白津昌之・四国営業本部長は「現在、意識改革を最大の価値観と位置づけ、顧客満足度(CS)の向上に取り組んでいる。SE部隊の統合がそのトリガー」と認める。四国全体としても、マーケット自体は他の地域に比べ、大きいとは言えない。小さいマーケットで着実にビジネスチャンスを捉えていくには「何よりまず、CSを上げないことには始まらない」(同)ということだ。

 SE部隊が分かれていた段階では、CSの定義そのものにばらつきがあった。県ごとに目指すCSの水準が異なっていれば、仮に他県のユーザーの耳に入るようなことがあると、富士通全体の信用にもかかわってくる。そこで、今年度から共通の指標作りに乗り出した。

 四国全体から民間や公共など6つの業種それぞれに10社の顧客を選び、CSを評価してもらう。その結果を業務にフィードバックするため、今年度上期に活動計画としてまとめた。現在は、その活動計画に基づいたアクションが実行されているかを検証している。もちろん、カスタマ・エンジニア(CE)や各地のパートナーとも、この指標を共有していく。顧客の定点観測を行うことで、四国全体のCSを高いレベルで収れんさせていくことが目標だ。

 「先進性のある顧客が多い土地柄であるため、ともに取り組んでいく中で、四国から新しいものを発信していきたい」(白津・四国営業本部長)と考えている。

 新たに発足して1年余りが経過し、期待された機能を発揮している富士通四国システムズだが、予想もしなかった課題も出てきている。採用の問題だ。4社に分散していた時は、地元志向の人材を確保することで、採用のリスクも各県に分散されていた。しかし、1社になり、高松が本社となると、地元志向の人材の目は、一気に東京や大阪に向かう。「同じ四国といっても、どこの県に配属されるかわからない。高松以外の存在感も薄くなる」(白山社長)と漏らす。主戦場である四国での戦闘力を維持するには「新会社である富士通四国システムズの認知度を高めねば」(同)ということだ。

■戦略に差はあっても、変わらぬ地元の重要性

 同じく、地元を主戦場とする戦略を採るのは、丸亀市のコムクラフト。和泉清憲社長は「現有の顧客を細かにサポートすることを重視する。間口を広げることは、あまり考えていない」という。同社の事業エリアは、高松市から観音寺市にかけての香川県中西部。製造業を中心にIT投資への意欲も活発。「基幹系の整備は、一通り終わったというところだが、プラスαの部分を求めるようになってきている」(同)のが、その理由だ。

 たとえば、事業エリア内のユーザー企業でも、東京などにも拠点を置くようになってきている。相互にリアルタイムでデータを見られるようにしたいというニーズは高い。もちろん、大きなデータもストレスなく見られ、しかも安全にとの条件がつく。ソフト技術で、端末をシンクライアント化することで、安価に実現できる。こうした事例は、自治体などにも適用できる場合が多く、実際、自治体向けに動き出しているプロジェクトもあるという。

 「従来は、オーダーメード中心でやってきた。これを中核として今後は、他社のパッケージなども活用し、保守を含むトータルサービスも行えるようにしたい」(和泉社長)と考えている。ただし、特定の企業とのアライアンスは念頭にない。アライアンスを組めば、ユーザーのニーズに最適とは言えない場合も出てくる。「ユーザーが利用している姿をイメージしながら、最適な組み合わせを見つけ出す。現在2対8の割合となっている官民比率も、官の割合が高まっていくのではないか」とみている。

 一方、香川県外に目を向けようとしている企業もある。エースシステム(河野猛社長)は、クリーニング業や福祉用具レンタル業向けなどの業種パッケージの開発・販売が中心。現在の売り上げ構成は、県内4割に対し、県外が6割となっている。上野準一常務は「2、3年で県外比率を9割近くまで高めていきたい」という。そのためカギとなるのが、業種パッケージの拡充と首都圏での拠点展開だ。

 パッケージの拡充では、生活密着型産業に照準を合わせる。「小規模な企業が多く、IT化も遅れている。さらに大手ベンダーも出てこない領域。種はいくらでもある」(上野常務)。現在は、レンタカー管理システムに力を入れているが、「現段階でも10の種があり、毎年1業種ずつは新しいものを出していく」(同)方針。

 商品群の充実とともに、顧客は全国に展開するようになっている。特に首都圏で増加しており、直接販売・直接サポートを基本としている以上、座視はできない。「かつて大手の受託開発をやっていた時には、東京にも拠点を置いた時期があった。今度は、自社製品の販売とサポートで、再進出したい」(上野常務)という。

 もっとも、地元を軽視しているわけではない。「地元の顧客と開発したものの中から普遍性を見出し、パッケージ化する」(上野常務)だけに、開発拠点としての重要性が変化するわけではない。いわば「商品のゆりかご」だ。

 四国にあっては企業数の多い香川だけに、地元をどう位置づけるかは、企業ごとに変わってくるようだ。
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