未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>66.ディー・ディー・エス

2006/02/27 20:43

週刊BCN 2006年02月27日vol.1127掲載

大学連携で指紋認証の新技術

 名古屋市のディー・ディー・エス(DDS、三吉野健滋社長)は、大学と連携して指紋認証製品を共同開発しているベンチャー企業。愛知県立大学や中部大学など複数の大学研究室と共同で、バイオメトリクス(生体)認証製品に焦点を絞り製品開発を行っている。

 現在主力となっている指紋認証製品「UBF」は、パソコンに接続してログインやアプリケーションの起動などを指紋によって認証する。認証では、「マニューシャ法」と呼ばれる技術を他社が採用しているのに対し、同社では国際特許出願済みの「周波数解析法」という技術を用いる。これは同社が、「世界で唯一の技術」(石田淳一・アドバンストプロダクツ事業本部長)と豪語するものだ。

 マニューシャ法では照合するための指紋が登録できないために認証が行えないケースがあるが、周波数解析法ではその心配はなく「どんな指紋でも必ず登録・認証できる」特徴を持つ。中部大学と共同開発した。

 この世界唯一の技術を武器に、「UBF」はこれまで10万台以上を出荷した。大口顧客としては、名古屋市役所が1万台、県庁で初めて指紋認証製品を導入した佐賀県庁が5000台を採用した。また、NTT西日本が同社の技術を指紋認証商品に組み込んだり、ウィルコムが今年2月に発売した指紋認証付きPHSに採用したなどの実績がある。業績も好調で、昨年度(05年12月期)は売上高が前年度比68.4%増の13億3200万円、経常利益が同151.4%増の1億6800万円。96年の創業以来最高の実績をあげて昨年11月下旬には東京証券取引所マザーズへの株式上場も果たした。

 今年は製品開発、営業面ともにさらにアクセルを踏み込む。

 製品開発では、今夏をメドにUSBメモリタイプで現行製品よりも小サイズの新製品を投入するほか、中長期的には指紋以外のバイオ認証製品を開発するため、R&Dを活発化させる。また、販売面では大阪府と福岡県に営業所を年内に設置し、営業担当者を20人体制に拡充する。さらに、日本市場だけでなく、韓国と中国に販売拠点として現地法人を設立する計画もある。

 生体認証市場は、中小のメーカーが少なく、富士通や日立製作所などの大手が主導権を握っており、ベンチャー企業がシェアを簡単に拡大できる分野ではない。だが、世界唯一と自負する独自技術を武器に、「バイオ認証業界でトップメーカーになる」(同)と、まずはUBFを指紋認証製品のデファクトスタンダードに成長させると意気込んでいる。(木村剛士)
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