視点

ITは若者にとって魅力的な職業か

2006/03/20 16:41

週刊BCN 2006年03月20日vol.1130掲載

 政府は2006年1月19日、e-Japan戦略、e-Japan戦略Ⅱの後継として「IT新改革戦略─ ITによる日本の改革─」を発表した。新戦略は大きく3つの政策群からなる。(1)ITの構造改革力を追求して、日本の社会が抱えるさまざまな課題解決をITによって行おうとする政策、(2)ITの構造改革力を支えるとともに、来るべきユビキタスネットワーク社会に向けた基盤の整備を行うための政策、(3)構造改革力の追求とそれを支える基盤整備という2つの政策群を通じて達成される成果を、日本から世界に発信するという国際貢献のための政策群だ。

 この中で最も気になるのが、第2の政策群にある「世界に通用する高度IT人材の育成」である。ここに掲げられた目標のうちの一つは、プロジェクトマネージャー、ITアーキテクトなどの高度IT人材の育成を促進し、産業界における高度IT人材の需給のミスマッチを解消することであり、この目標を達成するための方策は「2007年度までに産学官連携による人材育成プログラムや教材の開発を進めるとともに、その成果を活用した高度IT人材育成機関の設置などにより、2010年度までに産業界における高度IT人材の需給のミスマッチを解消することを目指す」とある。

 本当にこれでIT人材需給のミスマッチは解消されるのだろうか。周知のとおり、情報システム部門を志望する学生の割合は年々減少している。いくらIT人材育成の環境を整えても、それを目指す若者が集まらなければ人材の育成はできない。大学生に情報システム部門の人気がない原因は、この分野における就労環境がよくないからである。たとえば、情報処理推進機構(IPA)が06年1月に発表した情報処理産業経営実態調査(2005年版)によれば、年間の平均残業時間は298時間であるが、これは全産業平均の124時間の約2.4倍である。総労働時間も全産業平均と比べて292時間も長い。

 人材を育成する仕組みをつくることも重要であるが、なぜ若者が情報システム関連の職種を選ぼうとしないのかを十分に考える必要がある。魅力的な職業になれば、自ずと優秀な人材が集まるはずである。

 政策立案の第一歩は現状を正確に把握することにある。高度IT人材が不足しているという経営者の声だけを聞くのではなく、なぜ優秀な若者が集まらないのかを考えるべきではないだろうか。
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