「遉」をベースにカスタマイズ

RFPを自らシミュレーション

ペンチ・ニッパー製造のフジ矢は、理想の生産管理システムを手に入れるため、自らエクセルで生産効率化のシミュレーションを行った。自社の業務プロセスがあやふやなままITベンダーに生産管理の構築を依頼しても「納得のいくシステムはできない」(野﨑恭伸社長)と判断したからだ。

 綿密なシミュレーションに裏付けされたRFP(提案依頼書)に業務プロセスを図式化したDFD(データフローダイアグラム)を添付。業務プロセスを全面的に検証し直し、無駄を徹底的に排除した。こうした作業によって、「在庫圧縮とリードタイム短縮の実現に向けたあるべき姿を、ITベンダーに分かりやすい形で提示することができた」(コンサルティングを担当したITC-Labo.の川端一輝理事長)と評価された。予算は2000-3000万円と見込んだ。

 ITベンダー3社に提案を求めた結果、SIerのソランへの発注が決まった。ソランは大塚商会のグループ会社であるアルファシステムが開発する生産管理システム「遉(さすが)」をベースにカスタマイズする方式を採用。RFPを最もよく反映した提案内容で、なおかつ既存のパッケージソフトを活用することで予算もクリアしていたのが発注に至った主な理由である。

 他のベンダーは予算オーバーであったり、RFPで求めたものとは趣旨が異なる提案だった。背景には、自社ブランド製品の生産を中小企業自らが行っているケースが少なく、ITベンダー側に経験が乏しかったことが挙げられる。

 フジ矢は1923年の創業以来、材料の調達から販売に至るまで一貫して手がけており、中小製造業に多い請け負い型の生産スタイルとは一線を画す。「遉」システムも含め、中小企業向けの生産管理パッケージソフトは受注生産、下請け生産的なスタイルを前提にする傾向が強い。カスタマイズはこの部分を中心に行った。

 03年3月に自社ブランド製品の開発製造を一貫して管理する生産管理システムが本格的に稼働した。昨年度(06年4月期)までに在庫数は半減し、生産の回転数も倍以上早くなるなど目に見えて改善した。在庫が減ればキャッシュフローもよくなり、新製品の開発サイクルも早められる。

 今後は自社生産の強みをフルに生かし、新しい流通形態や顧客ニーズを対応した新製品の開発に役立つIT投資を積極化させる。

 以前は電気工事などの専門店がメインの販売ルートだったが、近年は販売力がある大手ホームセンター経由での販売が急増。

 大手販売店との取引を強化するためには、ヒット商品を開発し、適正在庫で売れ筋の欠品を起こさないことがカギになる。

 現行の「遉」システムからはじき出されるデータを最大限活用して、より精度の高い製品戦略や生産計画を立案。ビジネス拡大を狙う。(安藤章司●取材/文)