視点

就職の節季

2006/10/30 16:41

週刊BCN 2006年10月30日vol.1160掲載

 大学生には忙(せわ)しい就職活動と卒論の季節がやってきた。センコー稼業もひと肌脱がなければならない節季である。

 ご承知のように、就職関係の試験にはSPI(総合適性検査)があって、ずいぶん幅を利かせている。最近では、7000社がこれを採用試験で利用しているようだ。就職後の転職あるいは社内昇進にも関係があるので、俎上に乗せてみよう。 

 SPIには、能力検査(言語問題と非言語問題がある)と性格検査がある。能力検査である程度の点を取れないと、面接に進めなかったり、仮に面接にいってもはなから対象からはずされてしまうケースが多い。大学生向きにはSPI─U、転職者用や社内昇進試験用にはSPI─Gがある。骨格は大して変わらない。

 能力検査の非言語問題では、推論・集合・順列組み合せ・確率・表・グラフ・速度・算数の基礎が中心になっている。要するに、小学校・中学校・高校1年くらいまでの数理的素養が問われている。言語問題は、2語関係・熟語・語句の用法・長文読解に4区分される。新聞や雑誌が無理なく読めればそこそこ良い点がとれるようだ。

 この枠組みはなかなか良く考えられている。言ってみれば、読み書きそろばん・リテラシーが問われているからだ。

 小学生全員に英語を教える愚挙や、中学生や高校生にワープロソフト・表計算ソフト・プレゼンソフトという史上最悪の文房具群を教える退行教育とは無関係なところがよい。

 非言語問題に対して、一部の学生は方程式・不等式や二次関数のグラフを見て、にわかに拒否反応を示すことがある。義務教育で数学嫌いになってしまった学生だ。半分は教師の責任でもあろう。しかし、良い教材や習得法にさえ従えば、日本人なら99%、拒否反応を排し、達成感によって自信を回復し、元禄や文化文政なみに世界水準を抜く素養を身につけられる可能性が残っている。

 言語問題に対しては、多くの学生が絶望的な点しかとれない。小学生の国語の時間を戦前の三分の一にした公教育が、なんと言っても元凶であると断言できる。一に国語、二に国語、三・四がなくて五に算数なのだ。

 パソコンや英語に血道を上げる暇があるなら、とにかく読書・読書・読書である。これは就職試験や昇進試験に限ったことではない。祖国とは国語なのだ。
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