視点

MVNOはモバイルの競争促進剤たりうるか

2007/01/08 16:41

週刊BCN 2007年01月08日vol.1169掲載

 MVNOという通信事業形態を知っている人はそう多くはない。携帯電話の事業者から回線を卸売り、ないしは相互接続という形で借りて、独自のサービスを提供する事業者である。固定通信でいう昔の2種事業者に相当する。

 このMVNOが、第3世代携帯でも、容易に新規参入できるようにするためのガイドラインが総務省によって作成された。現在、国民からの意見を募集している。

 番号ポータビリティの導入で競争が激化しても、携帯の利用料金は必ずしも下がっていないことから、MVNOの参入によって、携帯業界の競争をさらに促進する効果が期待されている。

 しかし、MVNOはドコモやauから回線を借りる形態だから、彼らが周波数が足りないとか、自社の経営に支障が出るなどの理由をつけて、回線の卸売りや相互接続を渋る可能性がある。ガイドラインは、携帯キャリアが卸売りや相互接続を断る場合を限定し、協議が決裂した場合の紛争処理手続きを明確にするなど、MVNO事業化のための環境整備をしている。合理的な理由がなければ、MVNOの新規参入を阻止してはいけないルールを定めたといってよい。

 ガイドラインの説明会があるというのでのぞいてみた。総務省の担当者の説明が終わって質疑になったが、会場からの質問はたった一人だけだった。新規参入する意欲のある人たちが来ているのかと思ったが、意外としらけた雰囲気だった。

 それもそのはず。ガイドラインにはキャリアがいくらで卸売りや相互接続してくれるのか、何も触れていない。MVNOを事業化するにしても、肝腎な回線のコストがいくらになるのか、分からなければ事業化のしようがない。

 規制緩和が進んで当局には携帯料金の許認可権限はもうない。だから回線の利用料金は両者の協議にゆだねるしかない。ガイドラインに何も書いてないのも当然である。

 担当者は新年にスタートするモバイルビジネス研究会で検討する、といっていたが、どこまで相互接続料金と卸売り料金に踏み込めるかが、競争促進のカギになりそうだ。

 キャリアは回線のコストを電話料金でほとんど回収しているからデータ通信で新規参入するMVNOは7割引きないし、8割引で貸してもらえるはずだという楽観論もある。捕らぬタヌキにならねばよいが。
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