SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>32.住商情報システム(上)

2007/01/15 20:37

週刊BCN 2007年01月15日vol.1170掲載

独自製品・サービス拡充を急ぐ

国際競争力の向上狙う

 住商情報システム(阿部康行社長)は独自の製品・サービスの拡充を急ぐ。国際的な競争力が見込める分野を選別し重点的に伸ばすことで他社との差別化を進める。グローバル規模の競争に勝ち残れる強みが「まだ十分に発揮できていない」(阿部社長)として、品揃えの強化に努める。

 2005年8月1日付で営業・マーケティング、IT製品の国際調達力に優れた住商エレクトロニクスと経営統合。今年度(07年3月期)は統合後、初めての通期決算を迎える。旧住商情報システムの連結売上高は705億円(05年3月期)だったが、今年度は統合によって約2倍の同1400億円を見込む。こうしたなか、最も力を入れているのが国際競争力の向上である。

 リッチクライアントの「カール」やグループ会社のヴィーエー・リナックス・システムズ・ジャパンを中心とするオープンソースソフト(OSS)、中堅企業向けERP「プロアクティブシリーズ」など強みとなる製品・サービスはすでに揃っている。だが世界の大手SIerと比べれば「手持ちのネタが少ない」と、厳しい自己評価を下す。

 海外に出かけて顧客や投資家と話をする際に「おたくはどんな会社ですか?」と聞かれる。国内では誰もが知る同社だが海外では会社紹介から始めることが多い。阿部社長はこの時の心境を「運動会の玉入れに似ている」と話す。自社の強みを玉入れの“タマ”にたとえる。

 顧客の目の前でカゴに入った玉を「ひとーつ、ふたーつ…」と宙に投げる。数が多いほうが顧客の反応がいい。「そんなに強みがあるのなら、この分野はおたくに任せましょう」と商談が進む。だが現段階では「途中で玉がなくなる」。世界大手の競合他社はカゴの中に玉を満載にして商談に臨んでくるのだから、「空のカゴを抱えたまま下手な話術で逃れるわけにもいかない」と苦笑する。

 グローバル展開を急ぐ背景には主要顧客である日系企業の強い要請もある。ブロードバンド網の発達でITのグローバルオペレーション(地球規模での統合的な運用)が加速。日系顧客のビジネスをグローバルで支えるためにも国際競争力の向上は急務だ。

 阿部社長は自社の研究開発の最前線をくまなく見て回る。新しい製品・サービスの芽を見つけると「これはウチの強みになるのか?」と問う。すると、しばしば「なります!」と担当社員から威勢のいい返事が返ってくる。「まじめでコツコツと開発する誠実な社風はわが社の誇りであるのは間違いない。ただ勝ち残るには次のビジネスにつながる芽をひとつでも多く伸ばさなければならない」。競争力のある尖った製品・サービスの育成に積極的に取り組むことで顧客の期待に応える考えだ。(つづく)
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