未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>111.亜才

2007/01/29 20:44

週刊BCN 2007年01月29日vol.1172掲載

バグ情報を一元管理するソフト

 亜才(藤原弘臣CEO)は、オフショア開発などを手がけるベンチャーだ。「国や文化にとらわれない新しい組織が作れないかと考えている。日本という枠組みから離れてアジアの視点で価値を提供したい」と藤原CEOは構想を練る。具体的にまだ模索中だが、そのなかで生まれたのが、バグ管理システム「バグ斬り」だ。企画は日本で行い、中国の子会社で開発。今年3月に発売を予定している。

 「米国の『Bugzilla(バグジラ)』など、オープンソースの製品は、日本の開発環境には合わない」とみる。システムの規模が大きくなると、顧客1社に対し、プロジェクト管理会社、その下にシステム設計の会社、その下に開発会社など、複数の会社がピラミッド構造で連なる。顧客がバグを発見してプロジェクト管理会社にバグを報告すると、プロジェクト管理会社は各社の担当に情報をおろす。原因や対処方法をつきとめるため「何度もメールなどでやり取りをする必要がある。メールでは、情報が散る可能性もある」。また「開発会社の中でやり取りした内部向けの情報を、顧客に報告するために外部向け文書に書き直す必要があり、効率が悪い」と指摘する。

 「バグ斬り」は各社間のやり取りをスムーズにするためのウェブベースの製品だ。Ajaxを使うことで、ページを遷移せず、迅速な操作を実現した。

 プロジェクトを管理する会社にサーバーを設け、顧客や開発会社がアクセスすることで、情報を一元管理できる。登録したバグ票は全社で情報を共有する。このバグ票の上位に位置する会社が、コメントを追記すると、すべての会社に公開される。しかし、開発会社など下位に位置する会社がバグ情報に追記した場合には、上位企業に公開されている情報に反映されない。そのため、顧客に公開したくない情報も自由に書き込める。また個人別、組織別にラベルを付けて管理もできる。

 複数社が「バグ斬り」を利用することを考え、ユーザー数ではなく、各テストフェーズごとに作成するバグ票を束ねた「バグ台帳」の数で課金する。バグ台帳を「バインダー」と呼び、1-3個まで無償にした。「バグは技術者のストレスの一つだと考えている。少しでもストレスを除き、重要な仕事に集中してほしい」という思いがある。無償にしたのは「まずは使ってもらい、その見返りに多くの意見を得たい」からだ。

 中小企業や大企業なら部門を対象に、受託開発と合わせ売上高3億円(07年8月期)を見込む。今後は売り上げの半分を「バグ斬り」にしたい考えだ。(鍋島蓉子)
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