ファイル交換ソフト「Winny」を開発・頒布して著作権法違反幇助の罪に問われた開発者に対して、京都地裁は、罰金150万円(求刑懲役1年)の有罪判決を下した。判決があった12月13日の全国紙の夕刊では1面トップで報じられるほど大きなニュースだったため、報道を目にした方も多いだろう。

 翌日の社説では、おおむね判決を妥当と評価するものが多かったが、朝日新聞だけは、被告側の主張をそのままコピー&ペーストしたかのような論調で目立っていた。

 判決に異を唱える主な論旨は、「ソフトウェア技術者が萎縮して技術開発をやめてしまう」というものである。しかしこれは、実態からずれた主張と言わざるを得ない。

 技術者が進歩的な技術開発を追求したいという気持ちは理解できる。しかし、技術の追求においては、常に市民の一員として社会的影響を考えてシミュレーションしておくべきである。

 今回のWinnyに関していえば、著作権侵害を防ぐ実質的・具体的な措置を講じないままに開発・頒布すれば、日常的、継続的かつ大量に侵害行為が蔓延するのは必然であると、開発者は認識していたはずだ。にもかかわらず、開発・頒布を実行したことに対して今回、法的責任を追及されたわけだが、技術者である前に、市民の一人として守るべき規範があり、社会的な責任や道義的責任があると思う。

 仮に技術者が萎縮するような開発テーマがあるのなら、情報倫理委員会のような形で議論のうえ、ガイドライン作りが必要だろう。いずれにせよ、法律を知らなかったといった言い訳や、法律を超えた技術を求めるといった主張は、技術者自身が民主主義社会の市民である以上、許されないのではないか。

 ACCSは、著作権保護団体である一方、ソフトウェア開発者団体でもある。法を担保する電子技術を持つ会員会社もおり、技術の有用性と可能性をどの団体よりも知っている。だから法と技術の接点に立ち、その間をつなぐ活動も行っていきたい。

 こうしたACCSの立ち位置からみても、そもそも、今回の判決で技術者が萎縮するとは思えない。

 被告側が無罪を主張するために「技術者が萎縮する」といったような論法を取るのは仕方ない面もあると思うが、これに乗じてメディアが、技術者の不安を煽るような報道をしてはいけないと思う。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。